清葉学園中学校・文芸部

金環油菜

プロローグ

第一話 帰り道

「うーん…………」

 なんとなく、考えていた。無意識に。

 どうしたらいいかわからない。だからそう声を漏らす。

 目はつむっていない。帰り道だから。

 そうゆっくり考えていた――途端、

「わぁっ!」

 突然、誰かが私の背中に!

「ひぇぁっ!!」

 そりゃこんな声でるよね!?

 振り向くと、彼女は、

「ヤッホー♪」

 軽快な声で挨拶あいさつしてきた。

 私の、友達だ。

「ゆ、友奈ゆうなちゃん!?驚かさないでよ!?」

 緑里みどり友奈。いたずら好きの元気な

 私は彼女に対して、

「考えてたこと忘れちゃったじゃん!」

 怒り?のような口調で、少し大きめの声で言った。

 なんだろうな……恨み、というか……そんな感じで言った。

 言葉選びに戸惑ったから少し声が小さくなってしまった。

「あははは。ごめんごめん」

 なにその「てへぺろ」みたいな言い方。

「それよりも、文芸部のこと考えていたでしょ」

「――!」

 図星ずぼしを突かれた。まさにそうだった。

 言われた通り、私は文芸部に所属している。国語が好きってわけでもないし、そもそも理系なんだけどなぁ……。

 呆気あっけにとられて何も言えずにいると、友奈が続けて、

「何を考えていたの?」

 と聞いてくる。なので私は我に帰ってすぐさまスマホをポケットから出す。

 起動したのはメモ帳のアプリ。

「これなんだけどね、どういう構成にしようかなーって――」

「どれどれ……」

 若干食い気味の友奈。思わず顔を引いてしまった。

 そのまま三十秒くらい、

「……なるほど。ホラー系ね。少し考えておくから『MINEまいん』で送って」

 MINE。オンラインで友達と会話ができるアプリ。そこにメモに書いてあること全てを、友奈とのチャットで送れというのだ。

「でも、私やり方わからないよ?」

「じゃあ私が教えてあげる。見てて」

 友奈がコピーの手順を実際にやるらしい。わかりやすいように説明してくれたおかげで一度で理解できた。

「うん、わかった」

「オッケー?」

 指でサインを送る。友奈が呼応していると、私が続けて、

「あとで送るね。じゃ、またね」

「またね」

 ……そういえばもう別れるポイントだったなぁ。

 私は手を振ると、友奈も手を振る。そうして、ひとり帰り道を辿たどるのだった。

 ――なんだか私、後輩になっていたような……


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