第36話 根っからの研究者

バティスタとアメリアに両脇を固められ、フェルナンドはアメリアの研究室に入る。


「お疲れさまです」

「お疲れ様です!」

室内にいる二人の研究員が、挨拶をしてくれた。


二人は代わる代わる、ケージに入った小さな飛竜たちの世話をしている。


「小型のドラゴン、最近増えてきてるでしょ?

今オレ、彼らの種族特性を研究して、論文を書いてるんだ。

今メインで回してる研究テーマだよ」

アメリアがさらりと紹介してくれる。


「確かに」

バティスタが頷く。

「犬や猫みたいなサイズのドラゴン、最近増えてるもんな…。

攻略法はあればあるほど良い。

おれ達戦士にとっては魅力的な研究だ」


「ま、一応国の研究機関だから、そういう役に立つ研究はしないとね。

…でーもー、」


アメリアが振り返り────笑う。


「それだけじゃ、つまんないでしょ」


デスクの上から何か取り上げるアメリア。

黒々とした、本型の石…。


「あっ、それ…私の」

「そう。フェリィが持って帰って来てくれた、石化した魔導書」


赤い水に浸かって石化させられ、しかしまだらの花を挟んだページだけ石化しなかった、あの本。

アメリアはそれを大事そうに開く。


「これ、オレの研究室に回してもらったんだ。

石化にかかって、無事なんて…こんな面白い題材、他に渡すワケない」


研究者の顔だ。

なんて頼もしい弟なんだろう…。



石化した魔導書を抱き、アメリアは言葉を噛み砕いて、説明しはじめる。


赤い水と、ケルベロスについて─────。


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