第28話 料理上手

よく煮込まれた塊の豚肉。

ほどよいとろみ加減。

辛さと旨味のバランスも抜群だ。


「美味しい…!」


フェルナンドは、皿のカレーライスを一気にかき込んだ。

こんなに美味しいカレーを作った人物は、何と軽業師ジェスターである。


「ごちそうさま!

はぁ…お店かってくらい美味しかった…!

さすが、ジェスターは料理が上手いなあ…」

「…いや、まあ…

レシピ見れば、このくらいは」

「私はレシピ見るくらいじゃこんなにできないよ…

ジェスターは何でも器用にできるよね…」


ちょっとはにかんだジェスター。

フェルナンドの平らげたカレー皿を奪い、流しに持って行く。

おまけに洗い物までやってくれる…。



本当にジェスターは料理が上手い。

何を作らせても上手で、野営のときは炊事の大部分を彼に任せている。

手際よく片付けながら仕事をし、出来上がった食事は申し分なく美味しい。


ちなみに、クラリッサやモナモナの腕前もなかなかのものだ。


クラリッサは、お菓子作りが抜群にできる。

何を隠そう、彼は有名なスイーツ店の息子なのだ。

味だけでなく意匠にも凝った甘味をパッと作ってしまう。

あれは才能だと思う。


モナモナは、そこにある自然から材料を採取して普通に食べられるものを作る、というのがめちゃくちゃ上手い。

仕事の行き先で遭難した時、食事面で何度彼に助けられたことか…。


一方フェルナンドだが、料理なんて普通くらいにしかできない。

いや、違うな。普通未満だ…。

最近、何でもテキトーにぶち込んでもとりあえず食えるものができる、超便利な調味料の使い方を知った。

その名も「コンソメ」。これさえあれば最強だ。



洗い物を終えたジェスター。

彼は、フェルナンドを振り向く。


「さて…

お前が生きてるのが分かったし、俺は帰る」

「あっ、うん。

美味しいカレーごちそうさま。あと洗い物もありがとう…」

「ああ…そのくらい、構わない。

良い休日をな、フェルナンド」


玄関を出て行くジェスター。


彼を見送りつつ─────

フェルナンドはやることをひとつ思い出す。


「あ…

新聞、取ってないや」


もうすぐ、16時。

多分この時間では、朝刊はもちろん、夕刊も届いている。

ポストが溢れる前に取りに行かなければ。


フェルナンドは、適当なサンダルをつっかけて、ポストのある1階に下りていった。

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