第21話 石化からの蘇生
石化したフェルナンドが、剣を抱いて佇んでいる。
火に当てられ、赤い水はすっかり乾ききっている。
念のため、ジェスターは、その辺で拾った枝をフェルナンドの体に触れさせてみた。
枝は─────石化する様子はない。
これなら、触っても大丈夫そうだ。
ジェスターは、手袋を外した両手を、フェルナンドの体に当てた。
力が、大地から流れ、ジェスターの体を通じて、フェルナンドに入っていく。
暖かい光。
蘇生術。
大地を流れる生命の力を吸い上げ、その力で死者を満たすことによって、死者の生命を取り戻す魔法である。
自分のものとは違う力を取り込み、その純度を保ったまま別の対象に流し込む。
これができる適性を持つ人物はごくまれだ。
だから蘇生術を使える人間は物凄く貴重で、重宝される。
また、蘇生される側も、この大地の力との共鳴具合により、蘇生されやすさに差異がある。
若ければ若いほど蘇生は容易で、種族差や個人差も大きい。
全員がパッと復活するわけではないのだ。
ちなみにフェルナンドは、今年で25歳という年齢を差し引いても、物凄く蘇生が容易な体質の持ち主である。
「戻ってこい…フェルナンド。
大地も…お前に生きて欲しいって、そう言ってるぞ…」
燃える命の火が、ジェスターを抜け、フェルナンドの全身を駆けめぐる。
黒い石の肌が、優しい血色を取り戻す。
固まった長髪がさらりとほどけ、空色になびいた。
剣を固く抱いた腕から、力が抜ける。
ジェスターは倒れるフェルナンドを抱き止め、ありったけの光を注ぎ込んだ。
「う…ん」
フェルナンドの、うめき声。
安心しきり、消耗したジェスターは、フェルナンドと一緒にくずおれた。
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