第19話 取り出し

石化したケルベロスの頭。

口にフェルナンドが入りっぱなしのまま、ガチガチに固まっている。


多分、ある程度割らないと、フェルナンドを取り出せない。

おまけに赤い水で濡れている。

触ったら、こっちまで石になってしまう。


「石を割るにしろ、引きずり出すにしろ、この水があってはな…。

モナモナ、これ乾かさないとまずくないか」

ジェスターが尋ねる。


「確かになー」

モナモナが、頷いた。

「割るのはボクがやるよ。

ジェスターは薪集めて、火焚いといて」


ジェスターは承諾する。

彼はクラリッサを下ろしてそっと横たえてやり、乾いた木を集めに向かった。



モナモナは、矢を何本か取り出し、くさび型の矢尻を取り付けていく。


至近距離で構え、弓をつがえた。


ケルベロスのあごに向け、まず1発、撃ち込んだ。

くさびがかすかに石に刺さる。


もう1発。

今刺さった矢の、矢羽根の部分に撃ち込んだ。


ケルベロスに刺さっているくさびの矢尻が、もう少し深く石に食い込んだ。


最初の一発の矢の矢羽根に、次の矢を正確に当てる。

こうして、くさびを深々と打ち込んでいく。

十分に刺さったら、次の箇所へ。


これを5箇所ほど繰り返して─────

ついに、ケルベロスの下顎が砕けて外れた。


そしてラッキーなことに、石化したフェルナンドも外れた。

ケルベロスの喉から抜け、がしゃんと落っこちた。


ケルベロスの左足が刺さったままの剣を大事に抱えている、フェルナンド。


これがまた、何の変哲もない、地味な剣なのだ。


片手で扱う用の長剣。

切れ味はそこそこ。魔法の乗り具合もそこそこ。

よく言えば、汎用性が高い。

悪く言えば、全てにおいて微妙。

おまけに、装飾らしい装飾は一切無い。


多少他の武器と違うところがあるとすれば、一カ所。

片手剣としては、気持ち少し長めの作りになっている。

これを難なく扱えるのは、フェルナンドの長身と技量ゆえだ。



ジェスターが戻ってきた。

大量の木を放り込んだネットを携えている。


「お…フェルナンド、上手く取れたな。

さすがだ、モナモナ」

「へっへー、上手いだろ?

じゃ、乾かそ」


ジェスターは、石化したフェルナンドにカギ爪のワイヤーを引っ掛けた。

引きずって、薪のそばに寄せる。


赤い水に触れたカギ爪が石化したが、直接水に触れていないワイヤー部分は石化を免れた。

どうやら、直接思い切り浸かりさえしなければ、ある程度大丈夫そうだ。


モナモナが、火打ち石を取り出す。

薪に火をつけた。


それから彼は、背負った荷物から、干し肉を取り出した。

矢の先っぽに刺して、炎に近づける。


「ほっとしたらお腹すいちゃった。

ジェスターもいる?」


ジェスターは、頷く。

モナモナから、干し肉が刺さった矢を受け取り、一緒に炙った。

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