第18話 ゆるむ緊張

「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ゲホ…ううっ、

っは、はぁ、はぁ…うぇ、ゲホ、ゲホっ」


魔法を連続で詠唱したクラリッサ。

しかも1発は、依り代を用いてイレギュラーな場所に魔法を発現させるという、極めて高負荷な行為。


息が整わず、えずくような咳をする。


ジェスターが駆け寄り、うずくまった背中を優しくさすった。


「大丈夫か、クラリッサ…」

「っ、は、はぁ、はぁ、ムリ、っ、はぁ、うう気持ち悪い…っ」


しかし吐けるわけではないようで、涙を浮かべてひたすら咳き込んでいる。


ジェスターは、クラリッサの体をそっと横たえる。

もし吐いても喉に詰まらせないように、横向きにしてやった。

隣に座って、背中をなで続けてやる。


モナモナが、歩み寄ってきた。


「お疲れ。

終わったな」


ケルベロスに取り付いたモナモナの体は、石の体毛で傷つき、切り傷だらけになっている。


時を稼ぐため何度も立ち向かったジェスターは尚更だった。

満身創痍という言葉が似つかわしい。


クラリッサは、この通りの状況。

この一発で決まらなければ、次は本当に無かった。


本当にギリギリだった。

ギリギリだが、セーフだ。


モナモナとジェスターは、視線を交わしあう。

手を上げて────ハイタッチした。



瞬間、二人の胸に違和感が走る。



自分たち3人は、ギリギリセーフだった。


しかし、そう。

ギリギリも何も、完全にアウトの奴が一人いるではないか。


「やべ、忘れそうだった。

ジェスター、フェルナンドの蘇生…」

「…あっ」


二人してすっかり忘れていた…。


疲れてるからしょうがない。

もう、そういうことにしておこう。


ジェスターは、少し落ち着いてきたクラリッサを抱き上げる。

モナモナを連れ立って、彼は立ち上がった。



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