第2話 蘇生

「ぐすっ、う…えっ、ひっく」


…聞き慣れた泣き声が、耳に触れる。

魔法使いの、クラリッサだ。



「泣くなってー。

フェルナンドなんかすぐ復活するじゃん」


これは…弓使い、モナモナ。



「…」


胸のあたりから、じんわりと暖かい光が入って来るのが分かる。

軽業師、ジェスターの回復魔法だ。



…どうやら、自分は死んだ…。

そして、蘇生してもらっている…。



フェルナンドは、重たいまぶたをやっと上げた。

視界にゆっくりと色が戻る。


「あっ!フェルナンド!フェルナンド!」

クラリッサが長い髪を乱し、涙をこぼす。

仰向けに横たわるフェルナンドの胸にすがりついた。

「よかった…暖かい…」


「あー起きた!おはよーフェリィ」

モナモナが顔をのぞき込んでくる。

「どー?どっか痛い?」


ジェスターは…

「…」

…哀れむような目で…こちらを見て…

しかし、フェルナンドの脈や、顔色や、他に体に異常がないかなど、手際良く確認していく。

そして、

「…」

ひとつうなずいた。


フェルナンドは、ゆっくり体を起こす。

一瞬関節がきしんだが、問題なさそうだ。


「ありがとう…

スライム達はどうした?」

彼は訊く。


「あーそれね!」

モナモナが、その辺の岩にどっかりと座り込む。

「クラリッサがみーんな吹っ飛ばしたよ!炎の魔法で!

おかげでフェリィの死体が真っ黒焦げでバラバラでさ~!蘇生できるか焦ったよねー、ジェスター」


クラリッサとジェスターが、神妙な顔でうなずく。


「そ、そっかぁ…。

とりあえず、洞窟のスライムを全部倒すって依頼は完遂…かな?」

「完遂完遂ー!

お前がスライムに埋もれて窒息して、魔法で燃えてる間にねっ」

「じゃあ、洞窟を出て街に戻ろうか…

クラリッサ、モナモナ、ジェスター。用意はいいかい」


3人が、荷物を纏めて立ち上がる。

だが────ふいに、ジェスターの姿勢がくらりと揺らいだ。


フェルナンドはジェスターを受け止める。


本来魔法とは縁遠い軽業師に、蘇生魔法を使わせている…。

当然、消耗する。


フェルナンドは、ジェスターを抱え、二人分の荷物を背負って、パーティーの先頭を歩き出した。


ジェスターが、うわごとのように、言葉を漏らす。


「お願い…だから…

…オーバーキルからの蘇生は…ナシで…」

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