テンプレ80 「主人公VS神」
3人の戦闘が終り、元の円形闘技場に戻ってくると、すぐにルーは賭けの賞品となる命令権を使用した。
「怪我人は大人しく、寝てなさいッ!!」
その命令に従い、彼らは戦うことを止め、各々が休息をとる。
「ふぅ~、これで一安心かな」
そう言うとルーは気が緩んだのか、その場で倒れる。
「あとはよろしく~」
※
あとを任されたヤマトたちはイスズの状況に目を向けると、そこには目を疑う姿のイスズが立っていた。
「えっ!? なんで、イスズ……」
ボロボロになり、ようやく立っているといった状態であった。
「ふ、ふふふ、ハーハッハッハ!!」
神は笑いを抑える事もせず、身動きしないイスズをまるでサンドバックのように殴りつける。
「所詮は人。たかだかトラックごときを人質に取られた程度で身動きしなくなるとはのぉ!」
闘技場にはどうやって運び入れたのか、ジョニー号がいつの間にか置かれていた。
そして、その下にはドス黒い魔法陣が敷かれている。
推察するに、あの魔法陣を発動させない為、イスズは神からの暴力に耐えているようであった。
「ほれぇ、転生を認め、『元』勇者と魔王の二人を再起不能にすると誓えば、貴様もトラックも解放してやるぞ。ほら、ほらぁ!」
神はその間もイスズを殴り続ける。
「おい! 神、テメー、さっきまで転生を認めるだけだっただろッ! もうオレは我慢の限界だッ!!」
イスズの手に収まっていたアリは人間体になると、神へ拳を向ける。
「ふむ。貴様に動くなと命じなかったのは、100年費やそうとも主人公にも為れぬ失敗作ごとき、ワシに一矢報いることすら出来ぬからだッ!」
神はアリの拳を避けると、反対に拳を叩き込む。
「ぐえぇ!」
神はアリを掴んで、宙へ投げ飛ばす。
「貴様から消してくれよう」
杖へと戻ったアリへ足刀が炸裂し、アリは真っ二つに切断された。
「アリッ!! テメー、よくもッ!!」
「殴るのか、ワシを、そうだのぉ、トラックを見捨ててやればいいッ!」
神が無防備に体を差し出した瞬間、視界の端に突然ヤマトが現れる。
「ちょっと、あんた、何してくれてんのッ! イスズの杖を折るなんてッ! あとで、光速移動できるアタシがなんで防がなかったんだって怒られるじゃないッ!!」
ヤマトは神に向かって袈裟切る。
普通の生物なら多量の出血があるところだが、ホムンクルスの体は血の一滴も流れず、何事もなかったかの様に動く。
「ふんっ! 神に刃向かうより、この男に怒られる方を恐れるか」
神はヤマトの動きよりも早く動き、ヤマトの兜を掴む。
「折角美少女に生まれたのだから、さっさと勇者にでもなびいていれば良かったものをッ」
そのまま地面へと叩きつける。
「むっ?」
神は叩きつけた地面の感触に違和感を覚え、周囲を見た。
「元魔王か。残り僅かな魔力で地面を柔らかくしたな」
肩で息をし、なんとか魔法を行使するクロネを忌々しそうに見つめる。
「イスズよ。やはり先ほどの条件は元に戻そう。転生を認めるだけで良い。こやつらはワシが始末する」
神はヤマトに向かって拳を振り下ろす。
「この世界の創造主、父たる神に逆らったことを後悔しながら死んでいけッ!」
ゴリッ!!
ヤマトへ拳が振るわれるより早く、イスズの鉄拳が神の頬を貫いた。
「父なら、子供に始末とか言ってんじゃねぇ!!」
神は闘技場の壁にまで飛ばされるが、その表情は痛みなど感じさせず、むしろニタリと邪悪な笑みを浮かべていた。
「ついに殴ったなイスズよ! 貴様のトラックが壊れるのは貴様の所為だ。そこで少しずつ朽ちていくトラックを見ているがよい。まずはその荷台からだッ!」
神が手の平をジョニー号へ向けようとしたその時。
ギュギュギュとタイヤを鳴らし急発進する。
「クロネとヤマトの危機に、お前が黙って見ているはずがないよな。なぁ! アリッ!!」
ジョニー号の窓が開くと、そこから人間体のアリがクールな顔に似つかわしくない、満面の笑みを向ける。
「おぅよ! イスズ、こっちは気にせず、思いっきりブン殴って来いッ!!」
アリはジョニー号を安全そうな場所まで走らせると、停車した。
「……ふぅ、よく、オレに応えてくれたな。助かったぜジョニー号」
そう言いながら、背もたれに体を預けるアリの下半身はなく、アクセルを踏み込めるような状態ではなかった。
「クロネとオレの魔力を吸ってたからな、どっかで繋がれると思ったが、成功して良かった。イスズがお前を相棒にするのも頷けるぜ。……はぁ、最後までおっさんの為か。まぁ、間接的に美少女を助けられたから、オレの人生にしては上出来なほうかな。……あとは任せたぜ」
カランッと音を立てて折れた1本の棒が運転席に落ちた。
※
「これで自由にお前を殴れるって訳だ」
イスズは拳を鳴らしながら、ゆっくりと神へ近づく。
「ふんっ。先ほどは不意打ちを喰らったが、今の貴様のボロボロな体でワシを倒せるのかぁ?」
二人はお互い拳は届く位置まで肉迫すると、先にイスズの拳が動いた。
「オラァ!」
神はそれよりも早くパァン! とイスズを殴りつけ、ニヤッと笑みを漏らす。
「やはり相当ダメージがあるようだのぉ! 遅い! 遅いぞぉ、ひべっ!!」
「あぁん! 何かしたか、今?」
殴られたことなど感じさせぬ勢いで、動かした拳は止まらず、神の顔面を捉えた。
「テメーの拳より、ジョニー号のエアバッグの方がよっぽど効くぜ」
「ぬ、主、それたぶん死んだときの――」
神は全て喋り終わる前にドゴドゴッと有に100発は殴られた。
「これはお前によって虐げられた現地人たちの分ッ!」
「ちょっ! お、多すぎぃ。も、もう止め――」
神はボロボロになった顔でなんとか発語する。
「まだまだぁ! ここからはお前に翻弄されたトラック
「ドラァ!!」
さらに渾身の力で神をブッ飛ばす!
「はぁはぁはぁ……」
珍しく肩で息をしながら、イスズは足元に倒れる神には目もくれずジョニー号へ向かって歩き出した。
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