テンプレ33 「駄肉と体重」
3人は台車の上へ木箱を置くとヤマト、クロネ、イスズの順で入っていった。
アリは元々荷物の様な見た目の為、乱雑に台車へと置かれている。
「……ネブラ。よろしく」
クロネは目玉とドラゴンを足した様な
木箱の中は真っ暗で、何も見えないがそれゆえに、聴覚や触覚が鋭敏になる。
「イスズ、言っとくけど変なところ触らないでよね」
「お前のどこを触るんだ! 全身ガチガチだろうが!」
イスズの声には苛立ちが目立った。
「…………」
クロネは無言で場所を取らない様小さく丸まった。
「ギギッ!!」
箱の外からネブラが息を漏らす音が聞こえ、台車が動き始めるとすぐに、
「ギギッ!! 重い!!」
弱気な声が精一杯の力で放たれた。
台車は少し動いては止まり動いては止まりを繰り返し、進んでいく。
微かにネブラの息切れが聞こえてくる様が如実に重さを物語っていた。
「重いって完全にヤマトの所為だな」
吐き捨てるようなイスズの言葉にすぐにヤマトは反論した。
「ちょっとアタシが重いってそんな訳ないじゃない!! 体重はちょっと言えないけど、イスズより軽いはずよ! この鍛え抜かれたスレンダーな体に無駄な脂肪なんて1つもないわ!」
「……無駄な脂肪」
ヤマトの言葉にイスズよりも早く反応したのはクロネで、『無駄な脂肪』というところに引っかかったらしく、自分の胸元を触ってから、ヤマトを殴りつけた。
「ええぇ!! なんでクロネから!?」
「おい、お前ら、あんまり動くな! 狭いだろッ!!」
「元はと言えば、イスズがアタシのこと重いって言ったのが原因でしょ!」
「どう考えても鎧を着てるお前だろうが一番はッ!!」
イスズたちが言い争っていると、「ギギッ! ちょっとウルサイ!!」と今までずっと下手に出ていたネブラから注意を受け、静かになった。
「ギギッ。もうすぐで王の間に着きます。静かにしていてください」
数分の後、再びネブラの声が聞こえる。
なにやら門番の者と話しているようであり、木箱の中身は何かなどを質問されていた。
ネブラに対し門番の対応はとても丁寧で、さらに木箱を
重厚な扉が開かれる際のギギギィという音を耳にしつつ、ゆっくりと台車は揺れた。
室内へと進むと、木箱の中だというのに、得も知らぬ圧がかかる。
これが魔王のプレッシャーかと、ヤマトとクロネは息を呑んだ。
「それが新作か。ご苦労だったなネブラ。お前は下がっていい」
低く渋みの聞いた声。その声に込められた力だけで魔王だとわかるような迫力。
「ギギッ。もったいないお言葉です。魔王様あとはごゆるりとお楽しみください」
ネブラはゴクリと唾を飲み、声が緊張に震えながらも言葉を発した。去り際にバレないようイスズたちへメッセージを残す。
「ギギッ。すまねぇ。手伝えるのはここまでのようだ」
再び扉の開く音が聞こえ、ネブラが退室したことを告げた。
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