男はつらいよ

第1話

男性の不幸率というのは女性よりも高いらしい。

その理由の一つは、男性は、社会での競争に参加し、勝ち抜くことを要求されているからである。

しかし、競争の果実を多くの人に提供するのが文明であるが、個人の事情は一切斟酌されない。

私は中年のサラリーマンを観察するのが趣味の一つだ。それは、４０を超えるともはや勝者と敗者では、

圧倒的なまでに人生の密度が開いているからであり、勝者の自信にあふれた顔、

敗者のどこか、相手の顔色を伺うような卑屈さのコントラストが溜まらないからである。

さて、現実の私はというと、無職で全く働いていないということもあり完璧な敗者である。

その生活にストレスが全くないかといえばそんなことはない。

毎日これではよくない早く何とかしなければ、という問いが自らをズタズタに引き裂くのである。

一方で、社会には女性の社会進出を掲げるフェミニズムという人々がいる。

私は、彼女たちが知っておくべきことは、経済的なメリットなどではなく、

現実の男性は競争に追われて不幸と幸福の綱渡りをしているという現実である。

女性の能力が男性とさして変わらない以上、競争は益々過酷なものになるだろう。

その時に敗者として振り落とされる人間の数もまた、べらぼうに増えていくのである。

現実にフェミニズムの目指すところは女性の男性化であろう。

私はそんな世界に生きたくはないのだが、どうも、景気が良くなれば日本はよくなる、

と能天気に信じている人が多いくらい日本人にとって競争力の確保は重要な問題であるらしいから、

とてもこの動きが変わるとは思えない。