突撃!トラック転生屋

梦現慧琉

プロローグ

 ドンッ、と。


 鈍く湿った震動が全身を巡る。

 人体とトラック車体が衝突した衝撃。


 ――衝突事故だ。


 相対速度は申し分ない。

 一瞬が、コマ送りの様に経過する。

 フロントガラスへ花のように散る鮮血。

 圧倒的な質量が生み出す運動エネルギーは、

 肉や関節などでは吸収されきらずに、骨をも砕き内臓をも潰す。


 紛うことなく、致命的な衝突。


 感じた。

 その肉体から命がこぼれ落ちてゆくのを。

 魂が束縛から放たれ、この世界から去ってゆくのを。


 そして迷わず「異世界」に向かうだろう。


 異世界。

 此処とは異なる世界。

 辿り着いた其の土地で。

 見知らぬ森で目覚めることになるのか、ゼロ歳からの再スタートを迎えるのか、はたまた 異形の生物として第二の生を送るのか、オレは知らない。

 知る必要も、きっとない。


 送るところまでが――転生させるまでが、オレの担当だからだ。


「――っし……本日のお仕事、完了」


 オレは小さく呟いた。

 健康的な一般人男性を、狙い通りトラックで轢き殺して。


 そうさ。いつものこと。

 然るべき時に、然るべき手法で、然るべき対象を殺め、

 目的の「異世界」へ、きちんと飛ばす。


 転生屋。

 そいつがオレのお仕事だ。

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