Night of slaves(2)
突進してくるアメリを魅夜が受け止め、メアリから距離をとるように誘導していく。
「......っ!おねぃちゃん!」
こちらの意図に気付いたメアリの声が姉を呼ぶが、激昂し離れた距離のアメリには届かない。
今度は僕の番だ。メアリに向かって特攻する。
「ぅぉおおおおおおおおおお!!」
この戦いの必須条件は姉妹の分断だ。類稀な戦闘力を有するアメリ、頭脳と対象の捕縛を得意とするメアリを同時に相手にすれば勝ち目はない。
ぶっちゃけ怖い。喧嘩なんてこれまでしたことないし、する予定もなかった。
だがいくら考えても賽は投げられたのだ。強化された五感と肉体を駆使し、メアリに接近する。
「......っ!!」
メアリは瞠目する。
ここまで無表情だったメアリの瞳から動揺が読み取れる。
昨日まで無様をさらした人間がこうもあっさり距離を詰めてくれば隙をつけると確信していた。
「甘い」
クスリ、と笑みを漏らす。メアリに手が届くまで僅か数cmといったところで、僕の体がピタリと止まる。
「なっ?!」
地面から鎖が生えている。四肢を捕らわれ身動きがとれない。
「鎖は袖からしか出せないんじゃないの?」
「その通り。でも袖は腕だけじゃない」
視線を下に移すとパンツの袖から鎖が地面に突き刺さっている。
「貴方には一度見られている。なら、対策は当然」
ギチギチと締め上げてくる。あっさり拘束されてしまう。だが、これでいい。
––––––彼から離れなさい。鉄女。
一陣の風。風に運ばれた凛とした声音が聞こえたのと同時、不可視の刃がメアリ目掛けて放たれる。
「嘘。こんなの聞いてない」
メアリを不可視のはずの刃を飛んで避ける。鎖は断ち切られ拘束が解かれた。
影の中から姿を現わしたのは薄金色の髪、白磁のような白い肌に意志のこもった蒼い瞳。それを覆い隠すような黒の外套。
いつかの光景の中の人物によく似ている。
「流石です、エルフさん!まるで狙いすましたかのようなタイミングでした!」
賞賛と感謝を告げると、なぜか「うぐっ」と目を逸らす。
「え、え?今きたばかりだったから、うん、良かった。間に合って良かった。」
う、嘘くせー......
まあ、いいんだけど。
「それじゃあ手筈通りにっ!よろしくお願いします!」
「任せてっ!絶対に負けない」
エルフさんの返事を確認して、僕はアメリの方へと向かって走り出す。
「行かせない」
今度は両袖から鎖を射出。
届くかどうかという瀬戸際、後方でガキッと何かに防がれる音。風が鎖の行く手を阻む。
「彼の覚悟を穢させはしない。私の名にかけてお前はここで倒す」
外套の奥から貫くような視線をメアリに向けるとメアリの体がビクリ、と震える。
「どうやら、油断は出来ない」
エルフ対楠 メアリの戦闘の幕が切って落とされた。
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