STAND BY ME(1)
「それで、最近調子はどーなんよ」
藪から棒にコバヤシはそう言った。顔がニヤニヤしていて勘繰りめいたものを感じる。
現在土曜日の昼過ぎ。コバヤシは僕の部屋のベッドで寝そべっている。用があると言ってた割にのんびりとしている。
僕のベッドが野郎に侵食されていた。
「何にもないよ。僕が1番驚いてる。どうやら嬉しいことにヤツの遺伝子は僕に組み込まれていない可能性がでてきた」
ヤツとは勿論、クソオヤジのことだ。歩く生殖器、ヤツの体はチンチンで出来ていた。
「まあ、そう言うなって。おじさんは女好きである点を除けばすげー優秀じゃん?」
コバヤシの言う通りハーレム脳であること以外、ムカつくほど優秀だ。海外の有名大学を首席で卒業し、就職するかと思いきや会社を立ち上げて、今も海外のオフィスで仕事をしているらしい。
らしいというのも滅多に日本に帰ってこないからだ。仕事より女に忙しいんだろうけどな。腹立つ。
コバヤシは呆れ半分といった感じで笑っている。
「それはともかくさ、森野エルフも艶花さんとも何もないってすげーよな。勢い余って告白がうんたらとか言ってたのに」
確かに僕そんなことを言ってたな。
「なんかそういう場合じゃない。というか嫌われてるのかすらよくわからないんだよなあ」
あの一件からというもの、僕とエルフさんの距離は微妙だ。
秘密を盾にエッチな要求するとでも思われてるのだろうか。そしたら僕はオーク役?辛い。
それは僕の考える純愛ではないので却下である。
会話が止まって、僕は読書をコバヤシはゲームをしている。割と僕はこの時間が好きだ。別々のことをしていても苦にならない空間とは大事なことだ。
しばらく経って日が傾いてきた頃、コバヤシはこちらにチラチラと視線を寄越すのだが何かを言い出すわけでもない。
ほんとどうしたんだろうか。
「あの......さ、これ言うべきか考えてたんだけどさあ、んんー......」
珍しい。割とはっきり言うタイプの彼が言い淀むなんて余程のことなのだろう。
「コバヤシ。僕は大丈夫だから言ってほしい」
用がある、とはこのことだったのだろう。気を遣ってくれていたのだ。
「森野エルフのことなんだけど、変な噂があるんだよ」
まさかのエルフさん。てっきり自分のことかと思っていた。
「人の心が読めるって怖がられてる」
おぉう、マジか。エルフさんはファンタジーの中の【エルフ】なだけにありえなくはなさそう。
「イジメみたいなことになってるってこと?」
疑問をぶつけると首を横にふる。
「そこまでじゃない感じらしいけど、なんか口が悪いのも災いして、3年じゃもう誰も彼女に近づかないらしい。『冷血』とか『人嫌い』とか『女王様』とかの陰口聞くし......」
マジかエルフさん。
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