夜の底、井戸の底
夜の底で
声をあげる
だれにも伝わらず
自分にも届かない
自分とはだれなのだろう
壁の向こうの隣人だろうか
膜の向こうの囚人だろうか
会ったことがあるのかどうか
見覚えもないし親しみもわかない
井戸の底は狭くて暗い
ひとりだけしかうずくまれない
そして自分自身が他人なら
生き残るために争うしかない
この手狭な領地を死守するために
自分自身を殺さなければならない
自分とはだれなのだろう
なんど殺しても甦りつづける
不死の悪夢の貪欲な先触れ
夜の底で
井戸の底で
なんども
言葉の通じない
自分を理解できない
自分にも理解してもらえない
声が消える
惑乱が常態として君臨する
助けられなかった影が
哀しそうに胸をかきむしっている
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