穢悪の夜
人間であることが嫌になるような
事実ばかりがこころをかきむしる
なぜこんな生物に生まれたのだろう
なぜこんな生物が生まれたのだろう
幾度も胸のうちで問いかけてきた問いが
今夜はことのほか身近に迫る
目に入らないように古井戸に放り込んできた嫌悪が
許容量をこえてあふれだす
人間のいいところを三つ挙げろといわれたとしても
最初のひとつすら思い浮かばない
いいところではなく嫌なところでも結果は同じだ
嫌なところだらけだから
三つという限定が意味をなさない
砂漠から砂粒を掌にすくって
ひい、ふう、みいと数えたてていくその滑稽さ
砂粒をすべて足しても人間の罪科には届かないかもしれない
人間を嫌悪するのはきみ自身が人間だからだ
という微温的にもってまわった忠告も煩わしい
すべてが疎ましい
存在が忌まわしい
死んでほしい人などいないが
死に絶えてほしいとはときどき思う
今夜はそればかり考えている
人間を絶滅させるのは簡単だ
単純な話
自分が死ねばいい
外側から見れば一個人が死んだだけだが
内側から見れば
内側から見れば
内側から見れば
死を内側から見ることさえ出来たなら
その夢さえ叶えられるならば
その悲願さえ成就すれば
世界は音をたてて崩れ去り塗り変わるのかもしれない
それはなんという穏やかな景色だろう
今夜はことのほか人間が嫌になる
今夜はことのほか死が望ましくなる
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