夜の殺意

 夜がぎらついている

 朝への殺意を隠そうともしない

 もう暁はやってこない

 眠りこけている太陽を夜がくびり殺したから

 もう鳥たちは黎明れいめいを告げない

 愛し子の宿る卵を夜がすべて踏み砕いたから

 もう朝顔は花を咲かせない

 豊穣ほうじょうを約束した大地を夜が根こそぎに腐らせたから

 もう神は人間を見つけられない

 人のこころも魂も夜が死のような闇で覆ったから

 夜が朝を殺してしまった

 夜がすべてを呑み込んでしまった

 夜はそのあと自殺した

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る