第39話 ルリちゃんって、ほんとうに何者なの


 姫川家・別邸。


 大広間


「どうして命を狙われているのか。

 話してくれないか。

 なにか力になれることがあるかもしれないからさあ」


 俺は、フワフワのフリルとレースで飾られた西洋風の蒼いドレスを着たルナに話しかける。


「これ以上……お兄ちゃんたちを巻き込むわけには……」


 自分たちのトラブルに、俺たちを巻き込んだことを気にしているのか、ルナちゃんの表情はとてもせつなげで……。


「今さらそんなみずくさいこと言うなよ。

 ここまできたら一蓮托生だろう」


「うぇぇええええ」


 ルナちゃんは、突然に泣き出した。


「なにがあっても、俺は二人のことを見捨てたりしないから」


 俺はルナちゃんの頭を撫でると、彼女はいつになく幸せそうな笑みをこぼす。


「わかりました、お話しします」


 蒼いドレスを着たセレーネが重たい口を開いた。


「もうお気づきかもしれませんが、わたくしたちは妖精王アベルと人間の女性のあいだに生まれた混血なんです」


「ただならぬ雰囲気を醸し出していたから、高貴な血筋だとは思っていたけど。

 まさか王女さまだったとわな、正直驚いたよ」


「でも、エルフと人間では寿命がぜんぜん違うから。

 いろいろと大変だったんじゃないですか?」


 姫川さんはセレーネにたずねると、彼女の表情がくもった。


「ええ。

 母が生きていた頃は、まだ父の機嫌もよかったんです。

 母の死後。

 父は変わってしまいました。

 しかも『双子』で、ろくに魔法も使えないとなれば、利用価値のないゴクツブシ。

 ですから、父はわたくしたちのことを疎ましく思っているのです」


 その言葉が決して誇張ではないことは、セレーネの真剣な眼差しから量ることができた。


「だからって、実の娘を殺そうとするかよ」


「ありがとう、お兄ちゃん。

 わらわたちのことを心配してくれて」


「旦那さまはとても優しい人ですね」


 二人ともどこか寂しそうな顔をしているようにも見えた。


 やはり、実の父親に命を狙われたことにショックを受けているのかもしれないな。


「その件だけど、もう心配ないわよ。

 ルリたんがアベル坊やにキツく言っておいたからね。

 ルリたんの目が黒いうちは、セレーネとルナの身の安全は保障してあげるわ」


 ルリちゃんの大広間に入ってきた。


「ルリちゃんって、ほんとうに何者なの?

 政財界に強いパイプを持っていたり、エルフ王と謁見できたり、ものすごい人脈を持っているよな」


「露璃村くん、長生きしたいなら、ルリエールのことはあまり詮索しないほうがいいわよ」


「お姉ちゃんの言う通り、世の中には知らなくてもいいことがたくさんありますからね」


「王子さま、過ぎた好奇心は身を滅ぼしますよ」


「でも、なにはともあれ良かったです。

 セレーネさんとルナちゃんの身の安全が保証されたみたいで」


 3人の美少女から諭すに言われ、俺は唖然としていると、みちるちゃんが間に入ってくれた。


 おかげで先ほどまでの重たい空気が、まるで嘘のように軽くなった気がした。


「ありがとうね、みちるちゃん」


 ルナちゃんがみちるちゃんにお礼を述べる。


 そして俺たちは、ウナギやピザなどの出前を頼んで、バカ騒ぎをしたのだった。


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