第6話 無理ゲーにもほどがあるだろう。
『理沙視点』
妹の部屋の前。
「彩妹、また勝手に私の服や下着を持っていたでしょう」
私は勢いよくドアを開ける。
「あれ、いないの? まったくどこにいったのかしら。
まあ、いいわ」
私は妹の部屋の中に入ると、無断で持っていかれた自分の衣服や下着を探し始めた。
『大助視点』
この屋敷の住人はだらしないヒトが多く。
食べかけのお菓子の袋や空袋、飲みかけのペットボトルといった一目でわかるゴミから。
着衣済みの衣服や下着類やバスタオルといった思春期真っ盛り男子には刺激が強いもの。
はたまたダンベルやバランスボールといった健康器具など、散乱さしていた。
この散らかり様は、目に余るものがあった。
ゴミはちゃんと分別してから『ゴミ箱』に入れ。
脱ぎっぱなしの洗濯物は『洗濯籠』に入れ、脱衣所の前で待機していたメイドさんに渡す。
健康器具は『フィットネスルーム』の返却する、と女性の喘ぎ声のような聞こえてきた。
俺は1階の右奥の部屋から微かに開いていることに気が付く。
部屋のなかを覗き込む。
しかし
あったのは、ベッドの上で『妹の下着』の匂いを嗅いでいる変態の姿だけだった。
どうやら姫川さんが好きなのは、俺ではなくて殺妹ちゃんみたいだな。
でも殺妹ちゃんは、姫川さんことが大嫌いなんだよ。
俺が好きなのは殺妹ちゃんじゃなくて、姫川さんのことが大好きで、でもそのことを殺妹ちゃんに打ち明ければ、姫川さんと絶交されるかもしれないんだよな。
無理ゲーにもほどがあるだろう。
ベストエンドにたどり着くためには、殺妹ちゃんに気付かれずに姫川さんにもうアプローチをかけて、俺なしでは生きていけないほど好きになってもらわないとダメなんだよな。
しかも相手は『重度のシスコン』なんだよな。
並大抵のアプローチでは、焼け石に水だよな。
だからこそ、ここは『王道』でいくべきだ。
使い古されて手垢まみれになった手法だが、まずは恋愛相談に乗ってあげて、少しずつ距離を縮め。
頃合いを見計らって『告白』するというモノだ。
幸いなことに俺は殺妹ちゃんと仲が良い。
それを利用して殺妹ちゃんの情報を集めて、姫川さんに伝えれば俺の好感度は上がるはずだ。
今ここで告白をしてもフラれるのは、誰の目から見ても明らかだ。
少しだけ遠回りになるが、この作戦なら、告白の成功度は格段に上がるはずだ。
そうと決まったら、大急ぎで殺妹ちゃんの情報を集めないとな。
殺妹ちゃんを見つけだし、いくつか質問する。
「好きな芸能人っているかな」
「いません」
「好きな音楽は何かな」
「アニソン全般ですかね」
「最近ハマっていることってあるかな」
「ダイスケくんをいじることかな」
「殺妹ちゃんの将来の夢って何かな」
「はぁ、なんでそんなことアナタに教えないといけないの。
下僕のクセに生意気よ。
まさか、お姉ちゃんに頼まれたんじゃないでしょうね」
「姫川さんに頼まれたわけじゃないよ。
もし、進学するつもりなら、同じ大学に行きたいなって思って、ダメかな」
「もちろん進学するつもりよ。
お姉ちゃんが入れないぐらいの超有名大学にね。
本気でわたしと同じ大学を目指すつもりなら、勉強を見てあげてもいいわよ」
「べ、勉強を教えてください。
殺妹ちゃんと勉強がしたいんです」
「いい返事ね。
放課後、図書室に来なさい。
勉強を教えてあげるわ」
そして一足早く学校に行き。
姫川さんが知り得ていないであろう情報を書いたメモを、彼女の下駄箱の中に入れて置く。
放課後、図書室。
開いた窓から流れてくる心地よいそよ風と、運動部のかけ声。
「あ、そこにいるのって姫川さんじゃないかな」
「えっ!? どこどこ」
「自習スペースで勉強しているとびっきりの美少女がいるだろう」
スクールウェア風の白いブラウスから覗く、白魚のような指には、シャーペンが握られていて。
問題を解くたびに、胸元がプルンっと弾けるように揺れ、制服の上からでもツンッと上向き加減であることがよく分かる『美巨乳』だ。
決して重力に負けない胸は、制服越しにも激しく自己主張しているな。
白くて細い脚をさっと組み換えて、しゃと髪をかきあげるといった仕草がこれまた可愛らしいな。
「あっ、本当だ。お姉ちゃんだ。
でもあのお姉ちゃんが図書室で勉強しているなんて珍しいこともあるものね」
「せっかくだから一緒に勉強しないか」
あくまでも偶然を装って、殺妹ちゃんに提案する。
「お姉ちゃんは教えるのだけは上手いからいいわよ」
姫川さんも一緒に図書室で勉強することになった。
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