◇SNS それはギルティ!


サキ:……あーあ。妹に先越された。そして先に謝っておく。ミカ、ごめんね


ミカ:ごめんって何が? 早苗ちゃんがどうかしたの?


サキ:うん。実は早苗がホームパーティに行ってきたんだよ。王子宅の


ミカ:王子宅って、なんで? あっ、もしかして結衣ちゃん? 妹さん繋がりか


ユー子:ちょっと待ったーーっ! 今、王子宅って言った? それとも幻聴? ーーじゃなくて幻文字?


キョウコ:ホームパーティ? そんなのあったんだ。ユー子聞いてる?


ユー子:ないないないのないのスケ


キョウコ:だよね? でも妹さんが呼んだなら、わざわざこっちには連絡はこないか


ユー子:聞いてない_| ̄|○ どんな感じ? すっごく気になるんですけど


サキ:今朝、家でタコパをするから来ませんかって、結衣ちゃんから突発的なお誘いがあったらしいの


ひなの:タコパ! あらま楽しそう


ラン:いいな。変なもの入れて闇ダネ大会したい


サキ:王子も在宅しているって聞いて、もう一人の友達と一緒に喜んで行ってみたら、そこに結城くんも飛び入りで参加してたんだって。うぎゃーーっ! な・に・そ・れ!


ひなの:あっ、こっちも壊れた


ラン:仕方ないよ。みんな夏期講習でめっちゃストレスが溜まってるから


ミカ:なぜ王子宅に結城くんが? 飛び入りっなんで?


チカ:その場に結城くんがいた理由。そこが気になるね





ミカ:リアルクロスゲームかぁ。公園でばったりね。でも、そんな偶然ってあり?


シズ:確かに駅からの道なりに大きめの公園があったけど、あそこにリンクポイントがあるなんて意外。


チカ:シズ、久しぶり。なんか詳しいね。シズもゲームやってるの?


シズ:まさか。面接や小論文用に時事的なことにアンテナを張っているだけ。意識だけゲーム世界に行くVRと違って、リアルクロスゲームはウォーキングが必須だから健康にいいって流行り始めているみたいよ


ラン:ここを覗けるってことは、ちょっとは余裕ができた?


シズ:うん、ほんのちょっとね。でもまだ全然気が抜けない。少しは息抜きしないと煮詰まっちゃうからROMってた。武田家の話題が出てきたので急遽参加


チカ:タコパ。男子二人に女子三人か。テーブルを囲んでめっちゃ楽しそう


ラン:その内一人は妹ポジションだしね。実質2:2だよ。なんて贅沢な


チカ:うわぁ。都市伝説の合コン比率ってやつだ。こりゃ年下女子も油断ならないね。って、ごめん。一人は早苗ちゃんだった。


サキ:いいのいいの。私もやられた! って思ったもん。早苗の癖に生意気なんだから!


ユー子:合コン! 出会った瞬間のシンパシー。まさかのフォーリンラブ? そんなのイヤーーッ! シクシク。やっぱり若い方がいい? 


キョウコ:ユー子。結星くんは、年齢で相手を選ぶ人じゃないと思うよ


シズ:そうだぞ。そこは信じなきゃ。でもタコパか。行きたかったな(めっちゃ遠い目)


サキ:イジイジ。いいもんいいもん。今は我慢だもん。いい大学を出て、頑張ってお金をいっぱい稼いで、結城くんが入り浸りたくなるようなゲーム専用ルーム付きの家を建てるの! それが私の野望!


ミカ:やだ、同じこと考えてる。いっそ共同で作る?


サキ:ふむ。それは検討の余地がある!


ユー子:受験が、受験がいけないの。結星くんは優しいから、きっと誘ったら悪いって気を使ってくれたんだ


キョウコ:たぶんそうだよ。それに実際に誘われても、今日は振り替えもオンラインもなしの本番そっくり模試だったから、参加できなかったでしょ?


シズ:あと半年だから頑張ろう! ここで踏ん張らないと、この状態が更に一年も続くんだよ


ユー子:延長はイヤーーッ! ユー子頑張る! 絶対に現役で合格して、結星くんと同じキャンパスで薔薇色の大学生活を送るんだから!


ラン:ってことは、王子って進路決まったの?


キョウコ:うん。学校内の選考は通ったって連絡があった。行先はごめん、まだ内緒なんだ


ラン:ううん。無理に聞き出そうってわけじゃなくて、男子は進路が決まり始めたんだって思っただけ


チカ:上杉くんは何も言ってこないから、ちょっと驚いたんだよね


ひなの:上杉くんは性格的に、合格証書をもらってから報告しそうな気がする


ラン:私もそう思う。だけど、彼の進路を参考にできないのが残念。一緒にキャンパスライフか。いいなぁ。でもユー子、以前は法科専門大学を志望しているって言ってたよね?


ユー子:それはまだ法曹にするかどうか進路を迷ってたときだね。公務員試験なら総合大学でもいいから変えたの。でも解いてみたら、過去問がすっごく難しい。総合大学を舐めてた。もっともっと頑張らなきゃ。


キョウコ:そう言うけど、ユー子は予備校で総合文系の一番いいクラスにいるんだから、このままいけば余裕じゃない? 少数精鋭クラスなんでしょ?


ユー子:そう思っていたけど、油断しちゃダメだって気を引き締め中。


キョウコ:なんで?


ユー子:この間、一人途中入塾してきた人が凄い優秀だったから


シズ:この時期に途中入塾? それは珍しいね


ユー子:うん。聖カトリーヌの子で、急に外部受験したくなったんだって


シズ:なる、カトリーヌの子は侮れないんだよ。のんびりしたお嬢様が多いけど、中にはずば抜けて優秀な人もいるから


ユー子:賢いだけじゃなくて、目を引く美少女でスタイル抜群。醸し出す育ちの良さと品の良さ。なのに性格もいい。それにどうやら、志望校が同じらしい


キョウコ:へぇ。そういう選民的な人は、聖カトリーヌ学院大に行きそうなのに。どうして外部受験する気になったのかな? お嬢様の気まぐれ?


シズ:考えられる理由は、ずばり共学に行きたくなったから?


キョウコ:女子校からの脱出希望か。それなら分かる。でも、そんな人が王子と同じ大学に? 超危険かも。是非考えを変えて、聖カトリーヌに行って欲しい


ユー子:ヤバッ! ヤバヤバの予感! やっぱり危険? どうしよう?


ひなの:なんか、みんな早くも煮詰まってるね。勉強を頑張るのはもちろんだけど、息抜きも必要だよ。一日くらい集まって、私たちもタコパする?


ラン:女子会したーい


ユー子:する。エアー結星くんと一緒にタコ焼きを焼く


ミカ:一回転して、タコ焼きに話が戻ったね。早苗ちゃんのタコパは不可抗力だよ。だから、気にしないでって言っておいて


サキ:分かった。その優しいメッセージは早苗に伝えておく。でもミカ。今更なんだけど、さっき謝ったのって、それとは違う理由なんだ


ミカ:えっ? 他にも何かあるの?


サキ:うん。早苗が結城くんの手作りタコ焼きをお土産に持って帰って来たのを、怒りの余り、一人で全部食べちゃった件。えへっ、ごめんね


ミカ:もしもし? 謝ってもダメーーッ! それはギルティ!


サキ:ついでにもうひとつギルティがあるんだけど、それはまた今度白状する


ミカ:えっ! 何? 凄く気になる。今吐いて!


サキ:そして先に謝っておく。ミカ、ごめんね


ミカ:なんか最初に戻ってる! いったいなにーーっ!

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