春休み番外編

◇SNS ホワイトデーの後日談


ユー子:夢みたい。はっ! まさか本当に夢?


ひな:もしもーし。


ユー子: ……痛い。やっぱり夢じゃない。よかった。夢じゃない。


ひな:もしもーし。ユー子。舞い上がっちゃうのは分かるけど、今日それやるの何回目?


キョーコ: つねり過ぎて、アザできてそうだね。でも、でもでも、気持ちはすっごくよくわかる。王子の笑顔、マジ素敵だったし。あんなにときめいたのって、生まれて始めて。今だにフワフワしてる。あれが本当にあったことなんて、信じられないよ。


ラン:キョーちゃんまで。そんなにロマンチックな告白だったの? ちょっとそれは気になるな。


ユー子:鐘が、祝福の鐘がリーンゴーンって。……痛い。夢じゃない。


チカ:ユー子、落ち着こうか。


シズ:超。超超超超超かっこよかった。この記憶は永久保存版。頑張れ私の脳細胞。思い出すと、また涙出ちゃいそう。


チカ:ありゃりゃ。シズまで。王子組の三人、全員夢の世界か。


ミカ:はいっと。撃沈組が来ましたよっと。さあ、喋れ! 夢のような告白タイムを! 聞いてやろうじゃないの!


ひな:ミカ。どうした?


ミカ:今回の結果はもう仕方ないので、後学のために話を聞かせてもらう。そんな気になってきた。


サキ:それにちょっと希望も出てきたから。


ひな:希望?


チカ:実は、妹経由でこっそり結城くんの裏情報をもらったんだ。今回は、彼はお家の事情で全ての告白を断らざるを得ない状況にいたんだって。それをミカとサキに伝えたの。


ひな:それ、私たちが聞いてもいい話?


チカ:たぶん大丈夫だとは思うけど、流布する話でもないので、念のため当事者だけにしておく。


ミカ:そうしておいて。競争率が上がっても困るから。


サキ:ねー。それを励みに受験頑張る気になってきたし、いずれは広がっちゃうにしても、なるべく内緒でお願い。ひな、ごめんね。


ひな:気にしないで。二人にとって良さそうな話なら大事にして。応援する。


ミカ:ありがとう。ってことで、私たちに遠慮しないで、さあ、みんなで幸せ自慢をしやがれ!


サキ:そうそう。もう大丈夫だから。バンバン言っちゃって。


ラン:そっか。じゃあ遠慮なく……って言いたいところなんだけど、上杉くんの場合、特にそうロマンチックでもないのよね。


チカ:だよね。ランと一緒にカードを手にして行ったら、告白ありがとう、二人ともこれからよろしく、これ受け取って的な流れで。


ラン:凄く言葉使いも丁寧で、誠意は伝わるんだけど、礼儀正し過ぎたよね、あれじゃあ。


チカ:うん。伝説のお見合いプロポーズのようだった。ちゃんとしてもらった感はあるんだけどね。トキメキは足りなかったかな。


ラン:今度、他の三人と会う機会を設けるからって早速言われたしね。告白の次のステップにすぐに進んじゃった感じ。


ひな:人によって結構違うものだね。私の場合は、いつもの北条っちよりも、ちょっと照れていて甘さプラスだったかなぁ。北条っちは萌え可愛いし、トキメキはあったけど、それよりも甘フワほんわかな告白返しだったかも。


ラン:なんかそれ、想像つく。


ミカ:ふむふむ。礼儀正しい上杉くんにほんわか北条くんね。じゃあ、次は王子組。様子から察するに、トキメキロマンチック全開だったはず。裏山過ぎるぞ! さあ、吐け! いくらでも……は無理だけど、ちょっと話を聞かせなさいってば。


ユー子:星がね。手を繋いでるの。はにかみ王子が好きって。私のこと好きって。……痛い。夢じゃない。


ミカ:次行こう、次!


キョーコ:はにかみ王子か。確かにあれは萌えた。だってイケメンが照れるんだよ。もう何このご褒美って感じ。それで、これからお付き合いよろしくねって言われて。どこにデートに行きたいかって聞かれて。なんて答えたんだっけ、私?


ユー子:デート? 私そんなの聞かれてない。やっぱり夢……でも痛い。


キョーコ:ユー子、違う。三人で相談すればいくらでも時間をやりくりできるから、デートしようねって私から言い出したんだった。


ユー子:三人で? それって私も入ってる?


キョーコ:もちろんだよ。


ユー子:女神か!! 一生ついてく。キョーちゃん感謝! ありがとう!


シズ:キョーちゃん、ありがとね! 三人で……違った、王子も入れて四人で仲良くしようね!


サキ:シズはどんな感じだったの? 好きとかデートとか萌えワードをやっぱり言われた?


シズ:私? 私は……話すのはちょっと恥ずかしいかも。


ラン:何があったの? そう言われると余計に聞きたくなるんですけど。


ミカ:そのちょっと恥ずかしい話を、是非よろしく。


シズ:じゃあ、言っちゃおうかな。私ね。ずっと憧れてた告白シチュエーションがあって、それをお願いしてやってもらったの。


ラン:憧れのシチュ? いったい何を頼んだの?


シズ:えっとね。壁ドン。


ミカ:壁ドン!? ってあの壁ドン?


ラン:小説や映画の中にしか存在しないという古典ファンタジーじゃない、それ。


シズ:そう、その壁ドン。うふ。


サキ:めっちゃ聞きたいそれ。で、頼んだら王子がやってくれたの?


ユー子:壁ドン。王子の壁ドン。それって壁ドン。夢の壁ドン。なんか気が遠く……


ひな:ユー子、はい! ツネツネ。


ユー子:痛っ……夢じゃない。


ミカ:それより壁ドン! 


シズ:ついポロっと願望をこぼしちゃったら、王子が優しいから聞き返してくれたの。ダメ元でお願いしてみたら、ガッツリやってくれた。


キョーコ:どんな感じ? ペンダントをつけてもらった後に、私もお願いして一緒に自撮りはしてもらったけど、壁ドンは思いつかなかった。


シズ:もうっ……最高でした。一生の宝物。


ミカ:な、なんて裏山。リアル壁ドン!


ラン:お願いしたら、上杉くんもやってくれるかな?


サキ:機会が会ったら頼んでみようか? 案外サクってやってくれるかも。


ユー子:壁ドン。自撮り。壁ドン。ゲフッ。私の馬鹿。なんで思いつかなかったの。


シズ:きっと今からでも頼めばやってくれると思う。


ユー子:本当に?


シズ:うん。私がお願いしたときも、恥ずかしそうだったけど、嫌がってはいなかったし、何より王子は甘優しいから。


キョーコ:ねえ、ユー子。だったら、私たちもデートのときにお願いしてみない?


ユー子:したーい。でも心配。絶対に頭に血が昇る。鼻血出ちゃったらどうしよう?


ひな:そこは、鼻粘膜の血管を鍛えるんだよ! 頑張れユー子! 壁ドンのために。


ユー子:頑張る〜でも、どうやって鍛えるの? 誰か知ってたら教えて〜!

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