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「君のお母さんに叱られたよ。『夢を追い掛けることは、あなたの自由ですが、私の大切な娘の気持ちはどうしてくれるのですか』って、叱られた」


「……礼がそんなことを?」


「俺はニューヨークで成し遂げたい夢がある。日本には頻繁に戻れないかもしれない。空、君も会社があるだろう。だから俺に着いて来いとは言わない。でも、俺のパートナーになって欲しい」


「……颯人」


「恋人ではなく、俺の妻として……。ダメかな?」


「……颯人。私はニューヨークには行かないよ。それでもいいの?遠距離結婚で金髪美女と浮気なんかしたら、絶対に許さないからね」


「俺は浮気なんかしないよ」


 颯人君が空を引き寄せ抱き締めた。


 ――大人になったね、空……。


 大好きな人を、離したらダメだよ。


 十五歳の空が純粋に恋した人なんだから。


 ◇


「うわっ!おばさん……じゃない、お姉さんの彼氏って……榊颯人!?嘘!日本では活動休止中だけど、今度ハリウッドデビューするんだよね。お姉さんもなかなかやるね」


「……つ、翼、いつから覗き見してるのよ。あっちに行きなさい」


 翼ちゃんは嫌がる愁君の腕を掴みパーティー会場を飛び出し、颯人君の目の前に立つ。


「あたし、お姉さんの妹になりました。この無口なガリ勉はお姉さんの弟になりました。あの……、あたし榊さんの大ファンなんです。サイン下さい」


 空と颯人君は顔を見合せ笑った。

 そこには、ぎくしゃくした蟠りはない。


「あっ、それと握手と写真もお願いします!SNSには載せません。妹なので秘密は守ります」


 翼ちゃんの言葉に、空はクスクス笑っている。


「颯人ごめん。あたしの可愛い妹の願いを叶えてやって」


「いいよ。榊颯人です。お姉さんと交際してるんだ。宜しくね」


 颯人君と握手した翼ちゃんは、「キャーキャー」歓声を上げて、今まで見たこともないような無邪気な笑顔を見せた。

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