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狂おしいほどに愛しくて……。
狂おしいほどに恋しくて……。
その気持ちを抑制するために、私は仕事に没頭した。
恋しくて……。
逢いたくて……。
ただあなたの傍にいたかっただけなのに……。
素直に言えなかった『愛してる』の一言。
空や颯人君も、きっとそうでしょう。
互いが求め合っているのに、互いが遠ざけ合っている。
「お姉さんさ、自信がないんでしょう。自分に自信がないんだ。『好き』って言って振られることが恐いの?」
「恐い……?誰が恐いって言った?私はそんなこと一言も……」
空の秘書がツカツカと歩み寄る。
「社長、受付にお客様がおみえです。招待客リストにお名前のない方ですが、お引き取り願いますか?」
「私にお客様?母ではなく私にですか?」
空は私に視線を向け首を傾げた。
「空、お得意様かもしれないし、お断りするなら直接逢ってしなさい」
「……そうだよね。そうするわ」
空は秘書とともに、店の入り口に向かった。
空を訪ねてきたお客様は……
きっとあの人に違いない。
心配のあまり、私はロビーに行った空の様子を覗う。
そこにいたのは、一年振りに逢う颯人君だった。
「……颯人!?どうしたのよ」
颯人君が口元を緩め、大人びた笑みを空に向けた。
「空、久しぶりだな」
「ニューヨークからいつ戻ったの……」
「さっき帰国したんだ。空港から直行したんだ。君のお母さんから連絡をもらってね、お母さん、再婚されたんだね。おめでとう。お相手はあの時の塾の先生だったなんて驚いたよ。てっきり俺のライバルだと思ってた」
「やだ、勘違いしないで。それより……礼が颯人に電話したの?」
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