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「どうかな。人を好きになる気持ちって、自分でも抑えることはできないから。二人とも大切な存在だってことも、時と場合によってはあると思うよ」


「……そうだよね。あたしもわかる。二人とも大切にしたい気持ち、わかるな」


「空にはまだ早い。春希にも鈴にも、そんな恋は早すぎる」


「何でだよ。あたしだって色々あるんだよ」


「これは、大人の恋の話だよ」


「あたしたちもう十八だよ。体も心も成熟したオトナ!見てわかんない?このナイスバディ」


 春希が悩ましいポーズで俺を挑発しているが、俺には蛸みたいに体をくねらせているようにしか見えない。


「くくっ、三人はまだ未成年だよ。そんな恋は大人になってからにしろ。……しかし、今日は一段と暑いなあ」


 俺は大空に向けて両手を伸ばし、大きく背伸びする。


「さてと、午後の授業を始めるとするか。たるんだ受験生の気持ちを引き締めるために、ビシビシやるからな」


「はいはい、先生。そろそろ教室に行きますか」


 俺は礼さんに逢えなくても、空から礼さんの話を聞けるだけで満たされていた。


 二人を大切に思う気持ちがあったとしても、同時に愛する自信はない。


 俺が今守るべき者は……

 奈央と二人の子供達だから。


 礼さん……


 君に逢えなくても……


 君と触れあえなくても……


 いつも心の中には、君がいる……。

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