【17】運命《さだめ》
真side
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空が夏期講習から入塾した。クラス分けの学力テストは、一年生から通っていた塾生を抜き、学年トップ。即ち、特待生Sクラスだ。
俺達は講師と塾生だ。必要以上に塾生と接するのはどうかと思い、わざと距離を開けているのに、空は必ず昼休憩になると屋上に上がってくる。
一人きりではなく、空の友人である宮家春希と、立川鈴を引き連れて。俺は塾の講師なのに、昼休憩中、三人の恋の悩みを聞かされ、まるでカウンセラーになった気分だ。
「ていうか、まじでウザいから。みんなと教室で弁当食べろよな。教室は冷房ガンガン効いてるだろ」
「ていうか、この屋上クソ暑くね?先生さ、何でこんな暑いとこで弁当食べてんの?日サロの節約とか?あたしらがいなければ、屋上で裸になってるとか?」
やはり『類は友を呼ぶ』だな。
宮家春希は特に言葉遣いが悪い。セレブのお嬢様にはとても見えない。
「あちい」
春希、女子なのに暑いからってスカートをパタパタさせるんじゃない。鈴もうんこ座りしてんじゃないよ。
「これは君たちみたいな煩い塾生から逃れて、一人でゆっくり昼ご飯を食べるためだよ」
「嘘ばっか、そのキャラ弁見られたらヤバいからだろ?」
「まるで幼稚園児だな。美少女戦士のキャラ弁って先生のリクエストなんですか?超キモ、オタクとか?」
「そ、そんなわけないだろ」
これは翼のために作ってるキャラ弁。
ていうか、俺の弁当までキャラ弁にする必要あるのかな?
「ねぇ、真ちゃん」
「な、何だよ」
「礼がね、変なんだ。数日前から元気がなくて疲れてるのかな?」
『礼』の名前を聞いて内心ドキッとした。既婚者の俺が、そんな感情を抱くべきではないのに、気持ちが過去に引き戻されてしまう。
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