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「二年前に結婚したんだ。子供も二人いる。二歳と一歳、毎日家の中は戦場、大変だよ」


「二歳と……一歳……」


「そう。俺はもう二児の父親なんだ。驚いただろ。俺も驚いてる。二年前、こんな未来が待っているとは思わなかったから……。あの頃、思い描いていた未来とは違ったけどな」


 俺は当時を思い出し、空に本音で語った。

 当時の俺は、経済力もないくせに礼さんと空と暮らす未来を思い描いていた。


「……真ちゃんは、今、幸せなんだね」


「ああ、幸せだよ」


 俺は空の問いに即答し、真っ直ぐ見つめた。

 自分の心に正直に、俺は『幸せだ』と空に告げた。


「あたし、真ちゃんはてっきり礼と結婚するって思ってたよ」


「……礼さんと?俺と礼さんじゃつり合わないよ。礼さんは俺のことなんて、空の家庭教師としか思ってなかったはずだ」


「そうかな。あたしはそうなって欲しかった」


 空の声はどこか寂しそうで、その小さな声が俺の心を揺さぶった。


 忘れかけていた感情が、ふつふつと湧き起こる。


「大人には色々あるんだよ」


「ねぇ真ちゃん。あたしの悩みを聞いてくれる?恋の悩み」


「またかよ。また年上なのか?」


「ううん、あたしとタメだよ。大阪の高校の同級生、イケメンで人気モデルなんだ。すごくいい人」


「へぇ、モデルなんだ。それは凄いな」


「彼に告られた。でもね、あたし、昔恋した人を忘れられないの」


「昔?例の年上のフリーターか?」


「違うよ。あの時、片想いの人がいたんだよ」


「へぇ、それは初耳だな」


「でも、その人さ、あたしの大切な人と結婚すると思ったから諦めたんだ。それなのに結婚しなかった。違う人と……一緒になったみたい」


「それは複雑だな」


「頭にきたから、一発ぶん殴ってやろうかと思ったけど、その人なんかカッコいいんだ。オトナって感じでさ、ますますいい男になってた」


「なるほど」


「二年経ってもイケテるんだよ。あたし、どうしたらいい?」

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