162
「二年前に結婚したんだ。子供も二人いる。二歳と一歳、毎日家の中は戦場、大変だよ」
「二歳と……一歳……」
「そう。俺はもう二児の父親なんだ。驚いただろ。俺も驚いてる。二年前、こんな未来が待っているとは思わなかったから……。あの頃、思い描いていた未来とは違ったけどな」
俺は当時を思い出し、空に本音で語った。
当時の俺は、経済力もないくせに礼さんと空と暮らす未来を思い描いていた。
「……真ちゃんは、今、幸せなんだね」
「ああ、幸せだよ」
俺は空の問いに即答し、真っ直ぐ見つめた。
自分の心に正直に、俺は『幸せだ』と空に告げた。
「あたし、真ちゃんはてっきり礼と結婚するって思ってたよ」
「……礼さんと?俺と礼さんじゃつり合わないよ。礼さんは俺のことなんて、空の家庭教師としか思ってなかったはずだ」
「そうかな。あたしはそうなって欲しかった」
空の声はどこか寂しそうで、その小さな声が俺の心を揺さぶった。
忘れかけていた感情が、ふつふつと湧き起こる。
「大人には色々あるんだよ」
「ねぇ真ちゃん。あたしの悩みを聞いてくれる?恋の悩み」
「またかよ。また年上なのか?」
「ううん、あたしとタメだよ。大阪の高校の同級生、イケメンで人気モデルなんだ。すごくいい人」
「へぇ、モデルなんだ。それは凄いな」
「彼に告られた。でもね、あたし、昔恋した人を忘れられないの」
「昔?例の年上のフリーターか?」
「違うよ。あの時、片想いの人がいたんだよ」
「へぇ、それは初耳だな」
「でも、その人さ、あたしの大切な人と結婚すると思ったから諦めたんだ。それなのに結婚しなかった。違う人と……一緒になったみたい」
「それは複雑だな」
「頭にきたから、一発ぶん殴ってやろうかと思ったけど、その人なんかカッコいいんだ。オトナって感じでさ、ますますいい男になってた」
「なるほど」
「二年経ってもイケテるんだよ。あたし、どうしたらいい?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます