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「見直さなくていいのか?」
「見直す?何のために?百点に決まってる」
自信満々にそう言うと、空はニヤリと口角を引き上げた。生意気な態度は、昔よりもパワーアップしている。
流石だな……。
俺も空を見下ろし、ニヤリと口角を引き上げる。
「リスニングテストがあるから、着席したまま時間まで待つように」
「はいはい。先生の仰有る通りにします」
十五歳だった空……。
尖ってて大人に鋭い視線を向けていた空が、十八歳らしい明るい眼差しを俺に向けた。
俺は懐かしさで、胸がいっぱいになる。
――元気でいてくれてありがとう。
無力だった自分を責めた日々が、少しだけ報われた気がした。
◇
午前中の試験が終わり、昼休憩になった。
俺はいつものようにビルの屋上に上がる。ビルの屋上には休憩用の椅子やパラソル、自販機が設置されていた。
広い空の下で奈央の手作り弁当を食べながら、休憩をするのが俺の日課だった。
屋上のコンクリートは夏の陽射しで、焼けつくように熱い。俺は建物の日陰に腰を下ろす。
日陰に腰を下ろすと屋上を吹き抜ける風が、ひんやりとした涼しさを運んでくれた。
スラックスのポケットから煙草を取り出し、一本口にくわえ、ライターで火を点けた。
「あたしにも一本ちょうだい」
声のする方に、俺は振り返る。
「……はぁ!?ふざけるな!」
「なに向きになってんの。冗談に決まってるだろ。あたしは法律違反はしないんだよ」
「……そ、そうだよな。空、いつ東京に戻ったんだ?」
「三年の一学期が終わって、夏休みに東京に戻った」
「そうか……」
「大学は国立大学を受験するつもりだから」
「そうか、元気そうで安心したよ。また身長が伸びたんじゃないか?しかし、驚いたな。空を見た時に心臓が止まりそうだった」
「それ、あたしがイイ女になったから、ドキドキし過ぎて心臓が止まりそうなの?」
空は小悪魔的な笑みを浮かべた。
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