真side

40

 本宮空の家庭教師初日を終え、俺は真っ直ぐアパートに戻った。


 初日だからか、ドッと疲れた気がする。

 アパートに戻ると、奈央が夕食を食べずに待っていた。


 時計の針は午後九時前を指していた。

 玄関ドアを開けると、奈央はテーブルの前に座ったまま、頬杖をつきテレビを観ていた。


「ただいま」


「あっ真!お帰りなさい。ごめんね、バラエティー番組に夢中になってて、ドアが開いたのに気付かなくて」


 奈央は立ち上がり俺に抱き着く。


「いいよ。それより夕飯食べないで待ってたのか?先に食べていいのに。お腹空いただろ」


「だって、一人で食べるご飯は寂しいから」


 奈央は俺の耳元で、少し甘えた声を出す。華奢な体を抱き締め、テーブルに視線を向ける。


「今夜は何?」


「真の好きな唐揚げとポテトサラダだよ」


 唐揚げとポテトサラダは、奈央の手料理の中で一番の得意メニューだ。市販の唐揚げ粉だから味も一律だし、ポテトサラダはマヨネーズをたっぷりかければ美味しい。


「ああ腹減った。奈央、ご飯にしよう」


「うん。インスタントのカップスープ作るね。真、唐揚げレンジで温める?」


「このままでいい」


「わかった」


 ニコニコ笑いながら、奈央はキッチンに向かい、カップに粉末のスープの素を入れお湯を注ぎ、炊飯器からご飯をよそった。


 俺はスーツの上着を脱ぎハンガーにかけ、ネクタイを緩める。


 いつも楽しそうな奈央の笑顔と、何処か寂しそうな空と礼さんの顔。


 生活レベルは天と地の差があるのに、三人の表情は全然違う。


「はい、ご飯大盛りね」


「サンキュー」


 ご飯とカップスープをテーブルに並べ、奈央はクッションの上に座った。


「いただきます。ねぇ、社長さんの自宅ってどんな感じだった?」

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