異世界の観察者
天霧 翔
異世界の観察者 プロローグ
プロローグ
「エレン、パンツ見えてる。」
シノミヤ・アキが指摘する。エレンと呼ばれた銀髪オッドアイ美少女の動きが硬直し、次の瞬間・・・
「いやあああああ!レオ、ソフィー!」
エレンは顔を真っ赤にして乙女らしい悲鳴をあげ、近くにいた端正な顔立ちのレオと呼ばれた紫髪の獣人族の少年と、ソフィーと呼ばれた金髪サイドポニーのエルフ族の少女の後ろに隠れる。
悲鳴は乙女だが動きが乙女じゃない。全く目で追えなかった。なんという運動神経の無駄遣いだろう。
そんなどうでもいい事を考えつつ、アキはミルナという女性に問いかける。
「なぁ、馬鹿なのか?」
「はい、馬鹿ですわ。」
ミルナと呼ばれたアクアブルーの髪をした女性がはっきりと答える。彼女は美少女というより綺麗なお姉さんという感じだ。どちらにしろ美人なのは間違いない。
「ミルナのバカ!」
エレンが抗議の声をあげるがミルナは容赦なく続ける。
「違いますわ、エレン。馬鹿なのは貴女ですわ。」
「やっぱり馬鹿なのか。」
アキは再度尋ねる。
「ええ。馬鹿ですわ。」
くすくすと笑いながら肯定するミルナ。やり取りに入れないソフィーとレオは成り行きを静かに見守っている。
だが当事者であるエレンが当然黙っていられるはずもない。
「ミルナ!貴女は私の味方でしょーが!」
エレンが涙ながらに叫ぶ。
「はぁ・・・。まぁ、そうですわね。アキさん、出来たらうちのエレンをあまり苛めないで下さると助かりますわ。」
「ごめん、ミルナ。ついな。」
仕方がないといった感じでミルナがアキを諫める。アキも一応謝罪をするが、エレンは納得がいかない表情を浮かべている。
「わ、私は別に苛められてないわよ!」
アキを睨みつけるエレン。そして意を決したようにレオとソフィーの後ろから出て来た。アキの前に仁王立ちし、彼女は太ももに装備している短剣を取り出して構える。
「こ、この変態!やっぱりあんた殺すわ!覚悟しなさい!」
「殺されるのか?」
「そうよ!殺すわ!遺言くらいは聞いてあげるわ!」
「わかった一つある。」
「な、何よ!」
「パンツみえ・・・」
「いやぁぁぁぁ!私もうお家帰る!」
エレンが涙目になりながら再び目にも止まらぬ速さでソフィー達の背後に逃げて行った。
「アキさん、やめてあげてください・・・。」
ソフィーに注意された。レオは背後で小さくなっているエレンの頭を優しく撫でてやっている。
「でもね、ソフィー。見えているのに気づかない振りするのはどうかと思って。さすがに言った方がよくないか?」
アキは普通に地面に座っているのだから、短いスカートのエレンが仁王立ちなんかしたら見えるに決まっている。しかも2回目だ。
「た、確かに私なら言って欲しいですけど・・・。」
「酷いわ!ソフィーまで!」
ソフィーの何気なく呟いた一言にエレンが過剰に反応する。その様子を見ていたミルナがやれやれと疲れた表情を浮かべている。
「どう考えてもエレンの不注意ですわ。2回も同じ事しないでください。アキさん、話が進まないので、次見えたとしてもラッキーと思って凝視して頂いて結構ですわよ。私が許可しますわ。」
「ミ、ミルナのばかあああああ!!!」
「さてアキさん?貴方は一体どこのどなたですの?」
エレンの叫びを完全に無視するミルナ。どうやら彼女はエレンを慰めるより話を進める事を選んだらしい。
「そうだな、どこから話したものか。とりあえずミルナの質問に答えようか。」
「わかりました、よろしくお願いしますわ。」
「俺はいわゆる迷い人?というやつだな。別世界から来た。その話から・・・。」
アキが自分語り始めようとしたところ・・・
「2人して無視するんじゃないわよおおお!しね!しねー!」
エレンの叫びは当然ながらアキとミルナに無視された。
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