独り語り

拠草 漱

第1話【黒歴史ではない、“原点”だ――「真・仮面ライダー 序章」】

 仮面ライダー。近年では大きく異なる場合もあるが、「悪の組織に捕まり改造手術を受け、人で無くなったものの正義の心を持って悪と戦う悲しき宿命のヒーロー」という印象を持っている人が大半なのではないだろうか。


 初回である今回は、私の好きな仮面ライダーの1人でありながら怪人だの黒歴史だのと語られている作品「真・仮面ライダー 序章プロローグ(以下:真・仮面ライダー)」について語っていきたいと思う。


 本作は、仮面ライダーBLACK RXが終わり、仮面ライダークウガが放送されるまでの間に製作された3作品である「ネオライダー」シリーズの1つだ。


 今作のコンセプトは、「仮面ライダーの原点」「改造人間の悲哀」だと私は考えている。

 

 物語は、レーサーを目指していたIQ250の青年―風祭かざまつりしん―は父親の研究を手伝うために自ら実験のテスターをしている日々の中から始まる。自らが人々を殺戮する夢にうなされる真。しかし、夢の光景は最近騒ぎになっている連続殺人の状況に酷似していた。不安と恐怖を拭い去るようにトレーニングに打ち込む真。ある夜、ランニングをしている際に父の同僚である臨床的免疫工学の権威―鬼塚おにづか義一ぎいち―が何処かへ向かうのを目にする。鬼塚の行動に何かを感じ、彼を追い掛ける真。鬼塚を追い辿り着いた倉庫には、彼の秘密の研究室が存在した。自らの体から血液を採取したり、電気信号を与えたりする鬼塚を隠れ見ていた真に、突如自らの頭に痛みが走る。


 真の体に起きた異変とは!そして、彼に待ち受ける運命とは!

 これが仮面ライダーのシンの原点だ!


 大まかな粗筋はこんな感じである。表題にある序章の文字からもわかるように、この物語は言うなれば「仮面ライダーになるまでの話」だ。つまり、第一話を1時間半で見るのだ。こう聞くと、見る気が無くなる読者もいるのだろう。しかし、実際は違う。

 

 特撮はその放送形態の都合上、第一話と言うのは「仮面ライダーになって、最初の怪人と戦う」であり「仮面ライダーになった経緯」よりも「仮面ライダーと怪人の初戦闘」に主眼が置かれている(あくまで個人の見解です)。本来なら語るべきと原点である「Why」の部分をあまり長く語ることなくバランスよく纏められているのだ。


 しかし、この「真・仮面ライダー」はその「Why」の部分に重きを置き、自分がヒトで無くなったことへの主人公である真の孤独や恐怖・不安をしっかりと描いている。またそれを支えるヒロインの明日香あすかあいの献身もあって、人間ドラマを形成している。

 また、有名である変身シーンも「仮面ライダーが悪の組織由来である」ことや「変身」と言う言葉の本来の意味をしっかりと示していて物語を見ればそれに奇妙な納得感が生まれてくる。戦闘シーンも真が飛蝗のDNAを持っている点をしっかりと生かしているスーツアクターの岡本次郎さんの動きや本作唯一の怪人である改造兵士レベル2が、「野生と人工」としての動きで対比されており手に汗を握った。


 ラストまで見てからの主題歌である「Forever」も明るい曲ながら、今後の真の事を考えると物悲しさを感じさせ本作と非常にマッチしている。


 序章で終わったことを度々取り上げられ、怪人だ気持ち悪いと言われている仮面ライダー真だが、故・石ノ森章太郎先生が「仮面ライダーの原点」として本作を手掛けている。


 平成とも昭和とも異なる、原作者が描いた「仮面ライダーの原点」。気になった人は是非、見て欲しい。


 アマゾンプライムでの続編又はリメイクを願って。

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