現代人、『彼』に拾われる~『彼』とたけしの十数日
霜月二十三
現代人、『彼』に拾われる1日目
【帰り道……と思うじゃん?】
俺の名は八木たけし。見た目から大学生に間違われがちな十五歳の男子高校生――といっても入学式は来週――だ。
ある日、本屋でいつも読んでいる異世界転移物のラノベの最新刊とスケジュール帳を買った後、見慣れない文字でいろいろ書かれている看板や、急に目の前に現れる通行人に驚かされながら来た方向へ戻ったはずだが、そこにあったのは俺の家ではなかった。
家と言えば家なんだが、表札のタイプが違う。多分四人の住人の名前が載っているタイプみたいなんだが、文字が読めなくて誰が住んでいるのかさっぱりわからない。
あれこれ考えながら表札を眺めていると、意識が、遠く……。
【見知らぬ人】
目を覚ますと、ベッドの近くの椅子に座っていた灰色の肩にかからないくらいの切り揃えられた髪型で深い緑色の目をした色白な男の子が「あ、起きた」と言った。
「えっと、ここは……?」起き上がって俺は尋ねた。
「ボクの家。びっくりしたよ、久しぶりに知り合いの家を訪ねたら、その前でキミが倒れてたんだもん。あ、ボクはローレンス」
「ああ、俺はたけし、八木たけしだ。よろしく、ローレンス」
「……そういえば今日って、何日だっけ?」
「え? 確か四月二日――」
「ごめん、自分で確かめるよ」
俺の言葉をさえぎってローレンスは手をかざして緑色の半透明な板っぽいものを……って、えっ!?
【もしかして→異世界】
「え、なに、その板っぽいものは」
「? 時間と日付の確認魔法だけど、ほら」
「ま、魔法?!」と驚く間もなくローレンスにスワイプされた板が俺の目の前に現れる。
板によると今の時間は17:57って表記されてる。今日の日付は……2って数字以外読めねえ。
「えっと、結局何日だ?」
「春の月の初節の二日、だね」
魔法といい、文字といい、日付の言い方といい、ここ、もしかして異世界……?
【知識ゼロから始まる異世界生活】
ローレンスにここに来るまでの事情を聞かれながら和風な夕飯を食べた後、俺はローレンスからこの世界の文字を教わっていた。
ローレンスが言うには、普段の読み書きなら俺が買った本にある漢字とか、かな文字とか、アルファベットが使えるそうだが、公的書類とか学校のテストとかで書く名前の文字とか、文字が出る魔法とかにある文字がこの文字だから分からないままでいるのは問題があるらしい。
形としてはアルファベットをちょっと変形させたような文字で、読み方もほとんど知っている読みだったから覚えるのにそこまで苦労しなかった。
「それじゃ、この紙に魔法文字で名前を書いてくれる?」
なんとなく紙の裏を見た後、言われた通りに名前を書いた。
【おまけ→もしも拾われたのが女の子の現代人だったら 前編】
最初のたけしと同じような流れで家の前で倒れている女の子。
そこに彼が通りかかる。
倒れている女の子を横抱きにして自宅の一室まで瞬間移動する彼。
女の子を仰向けにしてベッドに寝かせ、その顔を眺めながら高ぶる自らを慰め、出た液体をちり紙で拭う。
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