第2話 再びの最悪

 あの事件から、5年の月日がたった。

 生き残りはいない。俺一人だけが生き延びる結果となってしまった。

 そして俺、火神 憂(かがみゆう)は16歳になったのだ。

 悪魔が大きな攻撃を仕掛けたのはあれ以来ないらしい。

 だが安心はできない、いつまたやつらが現れるのか分からないのだから。

 そこで対悪魔用の結界がはられ、悪魔は攻撃をしなくなった。

 人類は人類にもたらす悪を打つべく組織を作った。

 その名をundertail、UTと名付けられた。

 UTはさっそく悪魔への対策のために天使の血液を使い、新人類の開発を行った。

 人工的に人類を進化させるために……

 彼らは皆天使と似た力を手にし、そして固有の能力を得ることに成功した。

 憂もその新人類の一人であった。


 人類は天使の力を借りずに悪魔を倒すための力を手に入れた。

 天使は所詮敵の敵、彼らは僕らを生かす利点はない。

 強いて言うならば気まぐれだったんだと思う。

 だから、これからは人類だけで生き延びることができる。

 これなら行ける!そう思った矢先に再び最悪は始まる。

 あの日のように悪魔が現れる。

 結界は意味を成さず無残に壊される。

 憂はUTの要請により戦場へとかり出される。

 次の瞬間。

 目の前がブラックアウトする。 





 どれだけこの状態が続いたかは分からない。

 気がつくと、目の前には知らない白い天井があった。

 「ここは?天国か?」開口一番、一人でつぶやく。

 すると、隣に座っていた見知らぬ少女が答える。

 「いいえ、ここは天国でも地獄でもありません。あなたがいた基地から10kmは離れた別の基地です。」

 「あの町は、悪魔はどうなった!」

 「残念ながら、やつらは侵入と共に集中放火。町にいる人間は全滅、生き残った兵士は数人、悪魔はただの一体も殺せなかったわ。」


 残酷にも告げられる知らせ。

 あの事件のときと同じである。

 また、また自分は生き延びてしまった、なにもできなかった!なにも守れなかった……

 彼女はそんな彼を気にせず言葉を告げる。

 「あなたは今後悔している余裕はないの、悔しいなら今度こそ救ってみなさい、守ってみなさい。そのための道は私が用意してあげるから。」

 「道?」

 「そう道よ、悪魔をいち早く殺し人を守るための」

 「そういえばお前は誰でどこの所属だ?」

 「あー、まだ言ってなかったわね。」

 「私はUT特別機動隊、白夜の月所属の…

氷川 姫理(ひょうかわひめり)です。」

 「白夜の月って言えば悪魔狩りの?」

 「そうです、あなたには隊に入ってもらいます。」

 「なんでお前が決めるんだよ。」

 そうだ、こいつに決める権利はないはず。

 「言ったではありませんか道を用意すると。」

 「ただし、あなたは守りたいものを守るため人を捨てられますか?」

 確かにこいつの隊に入ればもうあんなことを起こさせることはできなくなるかもしれない。

 リスクを犯しても入る価値はある。

 「分かった、人を捨てる覚悟もある。入ろう白夜の月に」

 「歓迎するわ、ようこそ白夜の月へ」

俺はまだ知らない、この苦しみ以上の出来事に見舞われることになるなんて。 

 

 

 

 

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裏切りの翼 @ponta1221

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