第29話自分から望んで巻き込まれに行く・ルーク視点編

 シリルの城から出た後、公爵家にそのまま到着させることも勿論出来た。

 事情はどうであれ、シリルに会いに行けばあの女が黙っていないと解っていたが見過ごす事は出来なかった。

 きっと今度は公爵領迄押し入って来るだろうとは解っていたから今までは薬を届ける役目をサトリに任せていたが…、病状が悪化した為に俺自身が行く羽目になった。

 シリルの病状が悪化したと言うことは……また、あの女が魔女の呪いに触れたと言う事だ。母上を殺し魔女の森を焼き払い同胞達も皆殺しにしたあの女。

 殺した魔女達の呪いによってあの女が最も欲している、この国の後継者の母と言う立場が危うくなっている。

 そう……厄はシリルに降りかかったのだ。

 あの女が非道な行いをする度に悪化するシリルの身体。

 あの子には何の罪もないと言うのに…。

 魔女達を殺した時にあの女の腹にいたシリルが全てを被った。

 俺の薬は病状の悪化を抑える事しか出来ない。治す事は出来ない。

 その事実を知らないあの女は…俺がシリルに近付く事を何よりも恐れ嫌う。

 王都では後継問題が浮上していると報告が上がっているから、あの女はピリピリ神経を尖らし苛立っているのだろう。

 だからこそ余計に、必ずやって来るだろう追手を公爵家で待ち構える事はしたくなくて、リンには悪いけど、公爵領の手前で片付ける事にした。あの場所は森も深く滅多には人も中までは入ってこないから色々と片付けるには丁度良い。

 それに……リンにだけは俺の秘密を打ち明けるべきだろう。何も伝えないのでは彼女に対して余りにも不誠実に思えた。


 何より……俺自身が、彼女にだけは俺と言う人間を、偽りの無い俺自身を解っていて欲しかった。

 反面、俺の能力は正直気味悪がられて拒絶されてもしょうがない物だとも自覚していた。


 彼女は受け入れてくれるだろうか?

 その上で俺の側に居ることを選んでくれるだろうか?

 母親と辛うじてアン以外で、初めて気持ちが悪いと思わない女性に出逢えたのが何故かリンだけだった。

 俺の体質を緩和してくれるから?

 それも有るだろうが、其だけではない。彼女の側は、彼女が持つ独特の空気感が俺の心を安心させてくれる。

 不思議な少女だと思う。

 何故かは解らない。女だと思っていない、と言う訳では勿論ない。

 寧ろ俺にとっては誰よりも守るべき女性だった。


 宿に着くと、部屋が一つしか取れなかったから、実にあっさりと自分は外で寝ると言ってのけた年頃の少女。

 そんなものは勿論脚下だ。

 そんな事を許せる筈がない。

 逃がさないように外堀を埋めるべく、俺は部屋を取り、食事の手配やお風呂の確保も済ませた。

 勿体ないが染み着いている彼女は、きっと受け入れてくれる。まあ、俺を男として認識してくれていないだけかも知れないが。

 それはそれで美味しい部分とやるせない部分が交差するのだが……。


 お風呂に入っている間に彼女の肌着を新品の物に替えておいた。見た目の目算だったがどうやらぴったりだった様だ。

 身体は発展途上、これからどんどん女性らしい体つきに変わって行く事だろう。

 その度に新しくすると言う新たな楽しみが増えた。今日も明日も信じてはいない俺にしては珍しいと我ながら思う。

 うん、きっと今まで着用していた肌着は俺が保管しておいても問題はない筈だ。

 彼女は全てを失くして公爵家に働きに来ているのだから…その成長の過程を大事に取っておく事は亡くなられた親御さんに代わり雇い主としての義務だ。

(まあ、リンにしかやらないけど…)


 髪が乾ききっていないまま風呂から出てきた彼女は、何時もと違った雰囲気を醸し出していた。

 下ろしたままの黒髪も俺好みだった。

 年下の彼女に甘えるように肩を抱き締めても拒否されない事を良いことに結構際どいところまで攻めてみる事にした。


 俺の秘密を打ち明けても嫌悪せずに受け入れてくれる彼女。器が大きい。

 告白して、リンも俺に好意を持ってくれていた事を伝えてくれた。

 ああ、今死んでも良いと思える位に激しく嬉しい。どんなことをしても離さないと、もう逃がさない誓った。


 ベットで二人就寝すると直ぐにリンは規則正しい寝息をたてた。

 寝顔が年相応であどけなくて可愛らしかった。何時までも見守っていても飽きないけれど、俺の目は彼女の服の合わせ目からちらつく胸に気付いてしまった。

 告白して恋人同士になったのだから、彼女の体を育てていくのは俺の義務……そう言い聞かせて(←誰に?)するりと腕が服の中に侵入を果たした。

 此れは此で良い味を出しているのだが、

 今は未だ片手で全てすっぽりと隠れてしまう彼女の両胸を育てるべく優しく揉んでいく。

 激しくしてしまうとリンが起きてしまうから、ここは我慢だ。

 初めて触れた女性の胸は、優しい柔らかさがあった。かといって他に触りたいとも思わないが……。

 宰相に王族の義務だからと言われ、死ぬほど拒絶したのに男女の交わりを見せられ、あまつ触れさせようとされた時、余りの気持ち悪さに俺は吐いてしまった。

 以来……俺に甘い父上は配慮してくれる様になったのだ。

 まあ、それも俺が王位継承者順位から下がった理由だった。後継者を残せないから。

 ただそれを良しとしない宰相と、(高位貴族の令嬢からの告白をふったら、その令嬢がプライドから俺に弄ばれたと言い触らした事も要因だったけ)俺の容姿も手伝って何故か色男として浮き名を流しているのだから不思議だ。

 これ幸いと甘んじてそれを受け入れておいた方が何かと都合も良かった。

 お見合いの釣書の数が格段に減少したからだ。


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