第25話ルークの過去part4

 受付に行ったルークは女将に一部屋に二人分の食事を運んで貰うように伝えると、リンのお風呂の手配まで済ませてしまった。

 ルーク様においでおいでとされたので仕方がないのでリンは近付いて行った。


「………ルーク様?」

「悩む事なんてひとつもない。リンは俺と一緒に泊まるんだ」


 そんなやり取りを聞いていた女将さんは、

「旦那と仲良しなのは良いことだよ、良かったね、大事にされていて」

 等と大間違いもいいとこだが、今は否定出来ない。

 王家にも繋がる高位き貴族だとバレる方が不味いからだ。曖昧な笑顔で誤魔化すと鍵を受け取り、三階の門部屋に向かった。中はとても綺麗に整頓されており、華美では無いけれど好感が持てる内装だった。でもやっぱりベットはシングルひとつだけ。


「私は床でも寝れますよ…」

「俺がリンがいないと寝れないから脚下。…それに好きな女の子を床で寝せる何て絶対に出来ないね」

「……好きじゃなければ寝せるんですね…」


 照れ隠しからか、どうしても可愛くない言葉が口から勝手に出てきてしまう。


「好んでそんな事をさせる訳ではないけれど、俺も聖人じゃ無いんでね。…優先順位が当然ある」

「……私の優先順位は低くて結構ですよ?」

「そこは諦めてくれ…_断トツ一位だ」


 何だか、どこから突っ込んで良いのか解らないけれど、もう色々疲れてもいたので気にしない事にした。

 夕食を食べ後、ルーク様の好意でお風呂にも入れた。そこは有り難いんだけれど、何故か新しい下着が脱衣徐に置いてあり、しかも今まで穿いていた物よりも高価で、サイズがぴったりだった物だから……複雑な気持ちになっても仕方がないと思う。


 部屋に戻るとルーク様は部屋に備え付けれられていた椅子に座り外を眺めていた。

 私が戻ったことを確認すると、カーテンを閉めて笑顔を見せる。


「少しは安らげたかい?」

「お陰様で、下着まで用意して頂いた様で?……有り難う御座いました


 後半は当然嫌味だ。


「サイズはあっていたかい?」

「気持ち悪い事にピッタリです」

「良かった、俺の目測だったから。大丈夫だとは思っていたけど、安心したよ」

「……ルーク様は目測で女性のスリーサイズが解る上に下着をプレゼントするのが趣味何ですか?」


 用意して貰って有り難かったけれど、私の気持ちも考えて貰いたい。


「女性にプレゼントをしたのは初めてだよ」

「下着は、ですか?」

「いや……必要以上に親しくなるのは控えていたからね。…正真正銘女性にプレゼントはリンが初めてだよ。…それが俺の好みで選んでしまった実用的物で申し訳無いけれど」


 ……どこから、何を言えば良いんだろう?

 嬉しくない、と言えば嘘になるし。

 でも、やっぱり下着を夫でもない男性から貰うのは違うだろう。

 いや、待てよ?……これは使用人への支給品なのでは無いだろうか?

 主として、家人の身形も当然自分の評価に関わってくるだろうから、そうだ。

 きっとそうに違いない。


「ルーク様、支給品を有り難う御座いました。有り難く着せて頂きます。…ですが、今までの私の下着は、その一体どこへ?」


「……大丈夫、ちゃんと片付けたから」

「……そうですか」


 これ以上突っ込むのはよそう。

 きっと棄てられたのだ。安い綿の白いパンティ一枚とブラ位諦めよう。


「ルーク様はお風呂に入らないんですか?」

「俺は先程体を濡れたタオルで拭いたから大丈夫だよ……ねえ、リン隣に座ってくれないか?」


 ルーク様はベットに腰掛けると隣を手で差し座る様に促した。

 リンは黙ってそれに従うとちょこんと隣に腰掛ける。するとルーク様は後ろから腕を回し肩を抱くようにリンを引き寄せた。


「ルーク様、何してるんですか!?」

「ん?……リンに甘えているんだよ」

「可愛く言っても駄目なものは駄目ですからね!?」


 意外と強い力で抱き寄せられているものだから身動きが取れずに、顔だけ動かして抗議する。すると嬉しそうに額にキスをされてしまった。


「だから!!」

「ごめん……ちょっと言いづらい昔話するから、少しだけこのままで居させてくれないか?」

「言いづらいなら言わなくても良いのに…」

「はは、そうだね。…でも知っていて欲しい気持ちもあるから複雑なんだ」


 何故かルーク様に抱き寄せられたまま、リンはルーク様の過去を聞くこととなった。

 リンが大人しく腕の中にいることを肯定と受け取ったのかとルーク様はポツリポツリと話し出した。


「俺の母は異国の女だと教えたろ?」

「はい、聞きました」

「……異国の魔女だったんだ。母が住んでいた村は人里離れた魔女の森で、王子時代の父が学遊と称して色々旅して回っていた時に出会ったそうだ。とても不思議な力を持った人達が住んでいて、面白いと感じた父が頼み込んで少しの間住まわせてもらっていた時にできたのが俺だったのさ」


「……何かと規格外なお父上様ですね」


 素直な感想だろ。

 それで良いのか!?だって……何れ国王になる人物なのだろう!?


「魔女だと言った母の事に対する感想が無いところがリンだね」

「いえ、魔女なのは誰にも迷惑をかけませんが、王子がアホな行動を取る事は国民に迷惑がかかるでしょう!?」


 それを聞いたルーク様は、大笑いして少しの間話をすることが出来なくなったのだった。




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