第9話初めてなので!
私達のやり取りをまるで微笑ましい者を見るように見ているジン夫妻。
ちょっと、何て言うか……居たたまれない。
良いんですか?…ジンさん達にとってもルーク様は主な訳で、今の私は男な訳で、その主が男食家に見えているって事でしょう?
聞けない声は仕舞ったまま、
促されるままルーク様に手を引かれて浴室迄連行される。
ジンさんの(本当は同じ使用人でも格が上なので、敬語を使わなければならないところを、孫が来たみたいで嬉しいから要らないと、当人夫妻に言われたので、簡略させて貰っている)では、ルーク様をお願いします。の言葉に頷いて、護衛の人に道案内して貰っている。少し前を歩いているから………だから、私は小声で気付くかれないように。
「……私、女ですからね?」
私の横を歩くルーク様に話しかけた。
「勿論、リンは可愛い女の子だよ」
ルーク様も前を向きながら、小声で答えた。
「じゃあ何で背中を流せ何て言うんですか?…」
「リンの反応が可愛いから、と一緒に浴室にいる口実が欲しかったから、本来なら準備を終えた後は、浴室の扉の前で待機だけど、それはさせたく無いからね」
私が知らなかっただけで、使用人が主人の背中を流すことは、それほど珍しい事ではないらしい。
「それならそうと、茶化さず教えてくだされば良いものを」
「言ったらリンの紅くなったり、膨れて見たり、と言う表情が見れないだろう?」
「悪趣味です」
「はは、そうかもね」
階段を下り、浴室迄着くと、護衛もその場で待機。
中に入るのは私達だけ。
訳もなく落ち着かないのは…しょうがないよね。
洞窟を綺麗に装飾した様なお風呂場。
辺りはランプが無数にあって、クリスタルの柱を照らして幻想的な風景になっていた。
窓には四季を模したステンドグラス。
脱衣場も私の部屋よりずっと大きい。
思わず、感嘆の声を私は上げてしまった。
「どうやら、気に入った様だね。…さあ、俺はここで見張りをしているから、安心してゆっくり浸かって来なさい。…この湯は疲労回復と美肌効果もあった筈だよ」
「え?…」
まさか、温泉の件は全て私のため?
ご自身が入りたいからじゃなく?
「………正直申し上げまして、とても嬉しいですが…」
「敬語………返事しないよ?」
「スッゴく嬉しいけど、ルーク様が先でしょ!?」
「レディファーストでしょう?」
「………だって」
「あんまり駄々をこねると、俺が脱がすけど良いのかな?」
「駄目です……でも有り難うございます。…お言葉に甘えてお先に入っても良いですか?」
「勿論、身体を洗って欲しいなら、それも遠慮なく言って欲しいね」
「絶対に言いません」
私は、紳士的に後ろを向いて私の着替えを見ない様にしてくれているルーク様に心の中で感謝しながら、温泉を堪能した。
温度は少し熱いくらいだけど、気持ちいい。
乳白色のお湯もミルク見たいで何だか楽しい。
これは素直に感謝なか?何て思ってしまう。
心も身体も温まる。だからか、自分が思っているよりも疲れている事に今更ながらに気が付いてしまった。
もしかしなくとも、ルーク様や多分ジンさん達には気付かれていたのかも知れない。
何だか、自分がお子さま過ぎて嫌になる。
母が亡くなってから、誰にも頼らずに頑張ってここまで来たけれど、同年代の子達よりも大人なつもりだったけど、本当につもり、なだけだったのかも知れない。
そんな事を考えていたリンだったから、浴槽の奥の洞窟からする気配に気付くのが遅くなった。
「え?…誰?」
勿論返事はない。
考えていてもしょうがない。…今の状況でルーク様を呼ぶのは間違ってる。
守るべきはルーク様であって私じゃない。
不審者がいるかも知れないのに、このまま放置も出来ない。
「行く…か」
覚悟を決めて、大きめのタオルを体に巻くと音のする方に私は行ってみる事にした。
奥に進めば進むほど洞窟感が増してくる。
その事からも、ここが元々山を切り崩して出来た天然の要塞だと言う事が解る。
「薄気味悪い…」
装飾が施された場所と違い、ここは自然なままの状態だ。…上から水滴が滴り落ちるし、それがタオルしか巻かれていない身体に落ちて当たるしで、不快感この上ない。
灯りはお風呂場を照らしていたランプを一つ拝借させて貰った。
「うーん、気のせいだったかなぁ?」
やはり、戻ろうと思い、引き換えそうと思った矢先、手首を思いっきり引っ張られた。
その反動で、手に持っていたランプを落としてしまう。
勿論真っ暗になって、回りなんて解らない。
「あなたは誰なの?……」
震える声を何とか隠して、私は見えない相手に問いかけた。
「……」
黙んまりか……。
「小娘一人、別に怖くも何とも無いでしょう?…教えれくれても良いじゃない」
少し前までは男装をしていたが、今は素っ裸で、僕男です…何て言っても直ぐにバレてしまうから、端から正直に暴露した。
「……お前は…誰だ?」
質問に質問で返された事に多少の苛立ちは有るけど、ここは我慢だ。
声からして、男。幼い声じゃない。…、青年位か?
「……私はこの家に来た執事見習いよ」
「女…なのにか?」
「仕方がないでしょう?……私の主の趣味だもの」
嘘じゃないけど、ホントでもない。
「もう一度聞くわ…あなたは誰?」
後ろから抱き締められる形で体と手を押さえられている。
悲しい事にタオルは引っ張られた衝撃で取れてしまった。
まあ、暗いから見えて無いだろう事がせめてもの救いか?
本当……この職場に就職してから、初めて経験する事が沢山有りすぎて飽きない。
「……俺は…………」
男はだんまりした後、押さえつける手を緩めないまま、何も言わなくなってしまった。
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