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※バイクを駐車する音
※カラカラカラカラ(引き戸を開ける音)
爽太「おーい、
日読「あれ?
爽太「うっす。久しぶり。元気そうでよかった」
日読「そっちもな」
爽太「髪伸びたなー」
日読「それはいいから、どうしたんだよ突然。なんかあったのか?」
爽太「……父さんの葬式の時、日読ろくに口も利かずに相続放棄の書類に印鑑押して帰ったじゃん。いろいろ話があったのに」
日読「前妻の子なんて、完全アウェイだろ。迷惑かけないようにさくっと退散したつもりだったんだよ。で、それ言いにはるばる来たってわけ?」
爽太「いや、届けるもんがあって、仕事帰りに寄った」
日読「ちょっと立ち寄るって距離じゃないだろ?! よくここまで辿り着けたもんだ」
爽太「死ぬほど迷った。電波悪くてスマホの地図使えないしさ」
日読「爽太はここ、来たことなかったしな」
爽太「後妻の連れ子は前妻サイドのばあちゃんちにゃあ普通来ないって」
日読「来るなら来るって電話くらいよこしてくれりゃいいのに」
爽太「何回もかけたけど電波が悪かったんだよ」
日読「この辺は天気とか湿度とかで不安定なんだ」
爽太「んでさあ、鍵、開けっ放しじゃん。不用心だな」
日読「田舎じゃこれが普通だって。来たこともない家にずかずか入ってくる方も入ってくる方だよまったく。んで、はるばるやって来て手渡ししたい届け物って何だよ」
爽太「ああ、ちょっと待って」
※がさごそ
爽太「これ、父さんの形見っていうか、母さんが持ってけって」
日読「……なんだこれ? 紙くず?」
爽太「父さんの書斎の抽斗にあったんだけどさ、日読のお母さんが描いた絵……らしい」
日読「へえ? あいつ、前妻の走り書きなんかとっといてたんだ。それにしちゃ、いっぺん握りつぶしたあとがある」(笑)
爽太「俺たちがやったんじゃないって。見つけたときからそんなんだよ」
日読「わかってるよ」
爽太「そんで、母さんが実の息子さんの手に渡るのが一番だろうって」
日読「香奈枝さんも気遣いの人だね。ありがとう。……ところでこれ、読めた?」
爽太「……え? これ、字? 絵じゃないんだ」
日読「一部は字だよ。神代文字」
爽太「なにそれ、読めるわけないじゃん」
日読「だよなあ」
爽太「……あの……これ言ったら怒るかもだけどさ」
日読「……何?」
爽太「気味が悪い」
日読「あー……そうだろうなあ」
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