第32話 エピローグ
「今日も暑いね。エアコンつけようよ」
「ダメだ
「やせ我慢は程々にです。
「約束は守られてこそ価値がある。お前のようないい加減な女はモテないぞ、馬鹿
「それは結構。リアルの男にはあまり興味がないんだ。そりゃそうと、何でここに夕凪君と政宗君がいるの。私の恋路を邪魔しないで欲しいな」
「僕が事件解決の立役者だからです。僕の役目は役立たずの三谷先生の監視なのです」
「ボクは夕凪君の付き添いだよ。問題児女子生徒三人組とイケメン男子の組み合わせに興味があるんだ。これは絶対小説のネタになる!」
「試験勉強しない奴は出ていけ!」
「してる」
「うん」
ここは俺のアパート。リビングでの会話だ。
あの事件で学校も市内も大混乱した。そういう理由で、試験は二週間延期された。今は七月の最終週。明日から二日間の期末試験だ。試験を受けられなかった生徒の為に、八月に入ってから追試も組まれている。
その準備という名目で俺のアパートへ集まった問題児女子生徒三人組と、彼女たちにくっついて来た夕凪春彦だ。そして夕凪の友人である
「ねえねえミミ先生、どうして夕凪君が立役者なの」
「そうだ。私たちがお昼寝してた時にこそっと抜け出して夕凪と何やってたんだ」
「ミミ先生がそっち系の御趣味だとは知りませんでした。でも、それはそれで興奮します。ドキドキする」
「ミミ先生にそんな趣味はないはず」
「そうだよ。羽里ちゃん少し腐ってる?」
「そうかも。でも、そっちの沼も深くて萌えそうなんだよね。でへでへ」
また蒸し返してきた。
経緯は説明したのだ。緊急性があった事と春彦が封印に関係した特技を持っている事を。しかし、彼女たちは最後の最後で外された事を不満に思っている。そんな彼女たちは毎日のように俺の部屋へと訪れている。そして春彦は監視目的だと言いながら俺の部屋に来る。それに作家志望の政宗がくっついてきているという寸法だ。
勉強は比較的真面目にやっているようだが、いかんせんワンルームの部屋に5人集まったのではどうしても手狭になる。
「ねえねえミミ先生。もう少し広いお部屋に引っ越そうよ」
唐突に星子が提案してくる。
「賛成!」
羽里が挙手をして同意する。
「馬鹿だな。他人の住居に関してどうして意見できるんだ」
「そうだ。この手狭感が最高なんだ。どうしてそれが分からないかな」
「知るか。お前たちが来なけりゃここも天国だったんだ」
広い部屋を望む女子生徒と手狭な部屋を肯定する男子生徒が揉めているが放置することにした。
実は、引っ越し先の物件は物色してある。それを教えるはずはないだろう。俺は個人的に異次元の研究をすると決めた。その為に、ある程度の広さを持つ物件が必要なのだ。必要な機材や理論は紀子先輩のところから引っ張ってくるつもりだ。当然嫌とは言えないはずだ。
俺は京の言った言葉を思い出す。
『残りカスのようなものがどこかの異次元で彷徨うのかもしれん』
それならば、俺は彷徨っている京を見つけたい。そして本来あるべき場所へと返してやりたい。
そう思う。
夏真っ盛り。
気温は高いが、俺の心も熱く燃え盛っている。
俺の人生は、ここから京の面影を探すためのターンとなる。
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