23.不気味な笑い声

 午後5時、風見新社。未解決事件とは別件の取材で外出していた西崎沙耶が帰社すると社会部のフロアは仕事に追われる社員達の熱気と狂気で殺伐としていた。


『まーた副編の携帯繋がらない。どこ行ってるんだ?』

「国井さんとまだ連絡つきませんか?」

『そうなんだよ。しかも今日は朝から出社してない。副編のチェック待ちが山ほどあるんだけどなぁ』


受話器を乱暴に戻して同僚は頭を抱えた。

沙耶も昨夜から何度も国井と連絡を取ろうと試みているが留守電に接続されてしまい、留守電にメッセージを残しても折り返しの連絡もない。


『西崎ちゃん何か事情知らない? 最近特集のことで副編と話し込んでいただろ?』

「特集のこと以外は特には……」


 彼女はそこでひとつ思い当たった。国井の様子に変化が見られたのはあの時だ。

明鏡大学で出会った浅丘美月の話をした時、国井の目が鋭く光った気がした。


(浅丘美月……あの子に何かあるの?)


 不在の国井のデスクは国井宛ての連絡事項のメモや郵便物で埋め尽くされていた。


       *


 夜の秋風が激しく吹いて木々をざわめかせる。深夜2時を過ぎた国道の片隅で国井龍一はスマートフォンを手にして煙草をくゆらせていた。


『佐藤瞬か……。これは久々に燃えるな』


だらしない口元から紫煙を吐き出して彼は不気味に笑っていた。

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