プロローグ

真っ白な紙の上に赤い落ち葉が描かれる


本物みたい

お兄ちゃんの手は魔法の手だ

その手は赤い色鉛筆を置いて次は銀色のハサミを握った


ザクザクザクザク、紙を切る音


真っ白な紙から切り抜かれた真っ赤な葉っぱ

ギザギザ模様の赤い葉っぱ

本物みたい


お兄ちゃんの手は魔法の手

ひとりぼっちの私の手を握ってくれる手

大好きな温かくて優しい手


 ――赤い赤い水溜まりをは見下ろす


お兄ちゃんが作ってくれた紙の葉っぱみたいなギザギザ模様の赤い水溜まりを私は見下ろす


ゼンマイの切れたふたつのお人形、みーつけた


温かくて優しい手が私を包む

私は微笑んだ

そう、私は笑っていた


動かないふたつのお人形を見下ろして

私は笑っていた



プロローグ END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る