第11話 同級生の正体
「いやいや、ちなみちゃんはどう見たって人じゃない。何を言ってるの。とにかくちなみちゃんの頭から手を離して」
ちなみちゃんがワタワタしているから、シュカにそういうけれど。
シュカはちなみちゃんの頭からちっとも手を離さない。
「あのさ、しずくは俺のこと妖怪に見える?」
シュカがそう言うから、つま先から頭のてっぺんまでみてみるけれど……確かにシュカは外見は完全に人間だ。
「でも、待って……ちなみちゃんは、クラスの皆にもちゃんと見えているよ。妖怪だったらシュカみたく認識できない術が使えなくても見えないんじゃないの? だって、妖怪が皆に見えたら大騒ぎになるでしょ」
「それは、俺が人に認知されない妖怪で。こいつは半分人で半分妖怪だから見えるんだけどって説明がめんどくさいな。とにもかくにもこいつを倒せば、俺の妖怪の格が上がってしずくに妖術が「いやっ……いやっ……」
シュカと話していると、ちなみちゃんの様子がおかしい。
頭を抱え出して目はうつろだ。
「ちなみちゃん? あの大丈夫?」
ちなみちゃんの目をみて、そう声をかける。
「いやっ、いやっ……いやっ……いやっ…」
ちなみちゃんの様子が明らかにおかしい。
シュカが妖怪と言っていたこともあって知っている子なのに急に怖くなる。
「ヤバイ、伏せろ」
シュカにそう言われても、すぐに伏せれるはずもない。するとシュカの足が伸びてきて私の足を引っ掛けた。
足を引っ掛けられて後ろに倒れこむ私がみたのは……廊下の天井と、さっき私の顔があったあたりをものすごいスピードで通り抜ける……
絶叫しながら飛ぶちなみちゃんの頭と長く長く伸びた首だった。
「きゃぁぁぁああああ」
あまりの出来事に悲鳴が出た。
パチンっとシュカが指をはじく音が聞こえる。でも私は冷静になれない。
だって、ちなみちゃんの身体はシュカの隣にあるのに、首が長く伸びてもう頭がみえないのだから。
「いつまで呆けてんの。このままじゃまずいから追いかけるよ」
腰を抜かして長い首をみて、ひいひい言っている私とは反対にシュカは落ち着いた声でそういいながらちなみちゃんを器用におんぶする。
「おっ、おい、追いかける?」
ウソでしょ……
「もうわかってるだろうけど。ちなみちゃんはろくろっ首。ろくろっ首は妖怪の中でもちょっと特殊で、人間であり、妖怪で……って俺もろくろっ首じゃないから詳しくはわかんないんだけど。首が伸びているのを人間も見れる可能性があるならやばいってこと! 普通の人間は首が伸びてるのをみたら驚く。しずくも叫んだでしょ。SNSとかに万が一あげられたら大変なことになる」
「確かに、でもどうするの?」
なんとか立ちあがる。
「捕まえるしかないでしょ」
シュカはそういうと、走り出す。
私も一人で置いていかれてはたまらないとシュカの後を追いかける。
「とにかく、放課後とはいえまだ残っている生徒がいる。この子は人間社会に完全に溶け込んで生きてた。きっと、妖怪ってことばれたくないはず」
シュカはそういいながら指をパチン、パチンっとはじく。
首が伸びているちなみちゃんが万が一人に見えるとまずいから、認識されない術をかけて人に見えないようにしている。
階段のところにやって来て、首がどこに向かっているのかをみてシュカはほっとした表情になった。
「よかった、上の階に伸びてる。町中に逃げられる可能性はこれで少なくなる。もともと人に妖怪であることがばれたくなかったんだと思う。人の少ないほうに逃げてる。ろくろっ首ってどうやって退治するか知ってる? 身体をうまく利用して頭を捕まえるらしいんだよね」
そういって、階段を上り始める。
「捕まえられるの?」
「捕まえるしかないでしょ。ろくろっ首ってのは、本来寝ているときに首が伸びるんだけど……」
「思いっきり起きていたよね。ちなみちゃん」
どうみても、あれは途中でおかしくなった感じだった。絶対寝てなかった。
「そう、そこが問題。おそらくだけど、生命の危機を悟って逃げたんだと思う」
「それ、シュカがちなみちゃん倒すって言ったせいじゃない?」
「……ごめん。そうかも」
シュカはそういって、テヘっと舌を出した。
もう、シュカのせいで一生もののトラウマ映像を見てしまったぞ私。
ちなみちゃんの頭は屋上にいた。
身体から伸びる首は20m以上ある。
ろくろっ首はお化け屋敷とかでみたら大したことないと思っていたけど、実物はかなり怖い。
シュカはちなみちゃんの身体を横たわらせると私にこういう。
「少し離れていて」と。
そう言われて私はじりじりと後ろ姿の頭から視線を外さずゆっくりと後ろに後退した。
「あー、落ち着いてきて。俺はあんたに危害を加えるつもりはないよ。このままだと正体が皆にばれちゃうよ」
どうするのかと思えば、まさかの交渉!!
ちなみちゃんの頭がゆっくりとこちらを向く。まなざしはうつろで私はゾクッとした。
知っている子だけあって、さらに怖い。
「身体をもってきた。俺ぬらりひょんだから、首が伸びているあんたがいることに皆気が付いていない。だから、首を元に戻せばいつも通りの生活に戻れるってわけ。OK?」
両手を上げてシュカはうつろな目のちなみちゃんにそういう。
ちなみちゃんの頭がゆっくりと後ろに下がった次の瞬間。
「やっばっ!?」
そういってシュカが横に跳びのいだのだ。
シュカのいた場所にちなみちゃんの頭がきていた。
どうみても、身体に戻りに来たというよりかはシュカに攻撃をしていた。
やばばばばば私は慌てて、先ほどは言ってきた出入り口の裏手に回りこんで隠れた。
妖怪同士の戦い私が参加できるはずもない。
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