ぬらりひょんと学校
第5話 隣の席
朝起きると、私の部屋の床でシュカはまだ寝ていた。
うそでしょ、やっぱりいる!?
ということは、昨日のことも全部夢じゃなかったってこと?
それにしても、流石……人の家に入って来て我が者顔でくつろぐ妖怪――私の部屋でくつろぎ過ぎでしょ。
カーペットの上に大の字で寝てるし、こんな寝ぞう初めてみた。
あまりにも豪快なポーズで眠っているから、妖怪とわかっていてもクスッと笑ってしまう。
顔に似合わずいびきも豪快、よく私この音の中寝れていたな。
よく寝てるし。起こしても何を話せばいいかわからないから、私はシュカを起こさず身支度をすませていつも通り、一人で学校に向かった。
いつもと同じ通り道を速足で学校に向かう。
この町に妖怪がいて、しかも私の家にも普通に出入りしていただなんて衝撃だ。
昨日まで妖怪がいるだなんて考えたこともなかった。
ランドセルをロッカーにしまって席につく。
気になることはいっぱいあるけれど、授業はまじめにうけないとね。
成績が悪くなれば絶対お母さん「漫画を読んでるせいよ」って言うんだもん。
「ねぇ、しずく」
名前を呼ばれて横を向いて、固まった。
だって、そこには何食わぬ顔で、『ここ俺の席だし』って感じでシュカが座っていたんだもの。
「置いていくなんてひどいじゃん。あっ、前髪寝癖ついてるよ」
そういって、シュカは私の髪に手を伸ばして触れた。
「なっなっなっ」
『なんであんたが学校にいるのよ!?』と私がいうよりも先にシュカが口を開いた。
「うんこだったら、授業始まる前に早めにトイレいったほうがいいよ」と。
シュカがうんことか言ったせいで教室が、「高橋うんこしたいの?」とざわつく。
「そんなこと私は言ってないじゃない」
私がそういって怒ると、シュカが指をパチンっとならす。
すると、さっきまでのざわつきが不思議と収まる。
「ごめん、置いて行かれてムカついたからちょっとからかっただけ。何度も術かけるの面倒だから、叫ぶように話すのやめてくんない?」
こてっと首をかしげてかわいらしいしぐさでシュカはそう言う。
「あんた、なんで学校に普通にきてるのよ。しかも私の隣に座っているし」
私は声のトーンを落として小さな声でシュカにそう聞く。
「あんたじゃなくて、シュカ君ね。なんでって、離れると危ないって昨日言ったじゃん。だからなるべく近くにいるつもりだったのに、起きたらいないし。おかげで朝ごはん食いっぱぐれて最悪の気分だよ俺」
シュカはそう言うと、お腹を押さえて机につっぷせる。
「いやいや、そういう問題じゃないわよ。そこの席シュカの「シュカ君ね」
私が君をつけなかったら普通にかぶせてくるし。
「もう、シュカ……の席じゃないでしょ。座っていて大丈夫なの?」
でもそれを、私は絶対に君などつけてあげない。
「大丈夫なの? って……俺そういう妖怪だし。大丈夫、後で先生が、机が一つ足りないことに気がついて、もう一つ机持ってきて違和感がなくなるから。ほら、授業始まるよ」
そういってシュカは悪い顔で笑った。
シュカの言うとおり、「机をひとつ隠したのは誰だ!?」となって、その後普通に机が一つ追加されて。
私の隣の、山崎君が当たり前のように、新しく持ってきた机に座っていた。
シュカはいったい何をするつもりかと思えば、普通だった。
授業中は席に座って授業をまじめに聞いてノートをまじめに……ってのぞきこんだら、ノートに担任の先生の落書き書いてるだけだった。
こんな大勢の中にいると嫌でも実感する、誰もがシュカがそこにいるのを認識しているのに、なんていうか具体的に誰なのかをまったく気にしない異常性。
普通に友達の輪に入って話をして、さっと去っていく。
この列の子は前に出て問題を解けと言われて、黒板の前で問題を解く行動をしても、なんら違和感を皆がもたない。
本当に妖怪なのだということを実感する。
容姿だけでも、ちょっと目立つのに、さらに昼食の時3回もおかわりしたのに誰も気にとめない。
シュカに言うと『俺そう言う妖怪なんで』と言われそうだけど、それがすごく不思議な感じだ。
授業は無事に終わって掃除の時間、ゴミを捨てに行くときシュカがゴミ箱を半分持ってくれた。
「ねぇ、何でシュカは学校来たの?」
「だーかーらー、離れると危ないっていったでしょ。学校って妖怪がたくさん集まりやすいの。だから、ザコ妖怪でも倒そうと思ってさ。格上になれば、俺の術がしずくに通る。これでも考えて動いているんで」
「なるほど。確かに学校には怪談とかあるもんね! 私学校の七不思議知ってるよ」
「へぇ~、そりゃ手っ取り早いや」
こうして、半人前のぬらりひょんシュカと私の学校の怪談である七不思議の解明が始まった。
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