After ten years...

After ten years...

君はサイドシートで笑いながら長い髪を揺らしている。

僕は少し強くブレーキを踏む。

君は怒った顔をして髪をかきあげる。

ドライバーズライセンスを取ることが出来ない１７の少年と「髪をのばそうかなぁ」と思っている１５の少女の考えそうなことである。

そう、あれからもう十年も経ってしまった。

あの頃はとにかく車に乗る事が夢だった。

今思えば本当に小さな夢だけれど、あの頃はそんな事ばかり考えていた。

やっぱり赤のスポーツカー。

屋根が無ければそれにこした事は無い。

隣にはまだ幼さが残る君を乗せたい。

そんな風に思っていた。

十年の月日が流れて、僕は免停でまた免許が無い。

車は濃い緑の４ドアセダン。

隣には思いっきり大人の女を乗せたい。

十年というのは一人の人間を変えてしまうには充分過ぎるほどの時間なのかもしれない・・・。