第21話
私はノルンにグロリアの素行調査をお願いした。
「グロリア、私がお願いした仕事はできて?」
グロリアに招待客のリスト作成をお願いしていた。あれから三日。そろそろできてもいい頃だろうと思い彼女を部屋に呼んだ。
「申し訳ありません、だま出来ておりません」
できていないというよりも作る気がないのでしょうね。自分には陛下とユミルがいるから問題ないとでも思っているのかしら。
でも、それもノルンの調査の結果次第ね。
さすがの陛下も王妃よりも使用人を優先することはできないだろう。たとえ陛下がそれを良しとしても貴族はそうはいかない。
そんなことを許せば身分制度そのものが揺るぎかねないのだから。
「どうしてできていないの?私があなたに与えた期限は三日だったはずよ」
私はお茶を飲みながらグロリアを横目で見る。
「申し訳ありません。妃殿下と違って仕事が立て込んでおりまして」
淡々と告げるグロリアに対してため息しかできない。
暗に私が暇だと言いたいのね。
「他の仕事があったせいでできないと言いたいのね。あなた、随分とノロマなのね」
「なっ」
怒りに顔を赤くするグロリアを私はわざと分かるように嘲笑った。
「仕事の合間に私からの依頼もこなせないなんて。そんな程度でよく女官長が務まりますこと。テレイシアでは考えられなかったわ。女官長がこの程度なら他の使用人も質を疑ってしまうわ。ああ、それとあなたの言う仕事と言うのはユミルと楽しくおしゃべりをしていることかしら」
にっこりと私が笑えばグロリアは私を射殺さんばかりに睨みつけてきた。後宮の主に向ける目ではないわね。
後宮に入ることすらできない主だけど。
「番様です。気安くお名前を呼ばれるのは陛下もいい気はしないと思いますのでご遠慮ください」
「ねぇ、グロリア。あなたの目の前にいる人はだぁれ?」
こてりと首を傾けて私が問えば、彼女は何馬鹿な質問をしているのだという目で私を見てきた。
私だって本当はこんな馬鹿な質問したくはないけど、分かっていないみたいだもん。
「エレミヤ妃殿下です」
彼女の言葉に私は笑顔を深める。
「ええ、そうよ。テレイシアの元王女でこの国の王妃。なのに、ねぇ。どうして私が元平民で現在は公爵令嬢のユミルを気遣う必要があるのかしら?」
「番様は陛下の寵愛深い方です」
「だから何だというの?あなたも貴族の端くれなら知っているでしょう。貴族が神の前で誓うのは愛ではないわ。結婚は契約。必要なのは夫を支えられるだけの覚悟と力がある妻。ましてや王族の婚姻なら尚更。グロリア、機会を上げる。今日中にリストを作成してきないさい。もしできないのなら王妃の命令を聞けない無能は必要ないわ。いいとこ降格、最悪クビよ」
「そんな横暴なっ!」
悲鳴に近い声で言うグロリアの声が不快で私は眉間にしわを寄せた。
「部下に仕事を押し付けて一日中、ユミルの部屋でしゃっべているあなたに言えたセリフではないわね。下がりなさい。不愉快よ」
「っ。失礼します。妃殿下、このことは陛下に報告させていただきます」
「どうぞ、お好きに」
悔し気に捨て台詞を残してグロリアは退出した。
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