こっちの世界では無理でも、【ここ】でなら妹に本を読んであげられるもの…

第1話

わたしは、孤児だ。

家族は、妹だけ。

二人きりの家族。

眠るに妹に寄り添いながら、唯一手元に残った写真を眺める。

しわくちゃになった写真は、笑顔だったんだろうという事がわかるくらい。

わたしと妹と両親。

幸せだった、あの頃。

この世界は、孤児には厳しい。

いや、厳し過ぎる。

わたしはまだいい。

両親との思い出も、幸せだった日々も私の中にしっかりと記憶されている。

でも、妹は違う。

両親の顔すら覚えていない。

妹には、幸せだった日々なんて存在していない。

この世界は地獄だ。

孤児のわたし達には、今日の事で精一杯で、未来どころか、明日の事すら考えることができない。

この世界では、妹に絵本を読んであげることもできない。

だからわたしは…

明日、【境界】を越える。