俺の青春ラブコメはややこしすぎる
伊達 虎浩
第1話 プロローグ
季節は春である。
桜の花びらが舞い、暖かな風が吹く素晴らしい季節。いや、花粉症の人からしてみれば、花粉が舞いその花粉を鼻へと
それにだ。
好きな人と離れ離れになる季節でもあり、親しい友人と離れ離れになる、そんな季節でもある。
ま、どっちもいないんだけどね(^_-)テヘ☆
現在、とある体育館で、とある学校の入学式が行われており、とある生徒はとてもやる気が無かった。
以上!とあるシリーズでした。
ちゃんちゃん。と、面白くもない事を考えながら、チラリと体育館に掛かっている壁時計に目を向けると、開始からまだ一時間しか経っていない事に気付いてしまった。
はぁ。一時間しか経ってねぇのかよ。
いやはや、と、軽く頭を横に振っていると、とある視線を感じ、背筋をピンと伸ばす羽目になってしまった。
とあるシリーズの再来である視線。
その視線を、チラリと目だけで確認すると、これはこれは大層立派なお胸をお持ちの、我がクラスの担任にして、生活指導の
おぉ、怖い、怖い。
どうやら俺は、マークされているらしい。
おかしいなぁ…なんだかなぁ…。
とりあえず呼び出しをくらっては面倒なので、キョロキョロするのはこのへんで打ち止めにして、ここからは真面目に入学式を受けようではないか。
しかし、真面目に入学式を受けるって何なんだろうな?
背筋をピンと伸ばし、ジッとしているだけでいいのだろうか?
それだけで、君は真面目だな!などと、評価をするのは間違っていると、そうは思わないのだろうか?
社会はそんなに甘くないですよ?
女性はそんなに甘くないですよ?
は?ちゃんと聞いてんの?って、キレ気味に聞いてくるんだから…全く。怖いからやめて下さい、お願いします。
そんな事を考えながら、前を向く。
体育館中央に座る生徒達。
体育館の壁際に座る先生方。
体育館後方には、新入生の晴れ姿を見に来た親御さん達が座り、体育館前方のステージでは、入学式の司会進行係である生徒会の面々がずらりと並んでいた。
新生徒会メンバーの紹介があり、新生徒会長から新入生!答辞!と、号令があがると、新入生代表!木ノ下!と、新生徒会副会長が新入生代表を呼ぶ。
呼ばれた新入生代表である生徒が元気良くハイ!と返事をして、ステージ中央に立って、答辞を読み上げていく。
まぁ、入学式なんてのは、どこもこんな感じなんだろうなぁ…と、新入生の答辞を聞きながら、そんな事を俺は思っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
入学式が終わり、自分達の教室へと戻る事となった。
前の方から順番に体育館を出て行く事になるので、自分達の番までは拍手をして待機する事となる。
さて、ここからが勝負だ。
自分は浅倉先生からマークをされてしまっている。その為、如何にして、浅倉先生に捕まらないようにしながら教室に帰るか…勝負である。
どうするかって?
答えは簡単だ。
浅倉先生の顔を見ないようにしながら、体育館の外まで歩いて行けばいい。
な?楽勝だってばさ!
自分達の番になり、スッと立ち上がった俺は、浅倉先生が何処に居るかをまず確認する。
確認が終わると、後は一切そっちを見ないようにすればいい。
そんな事を考えながら、忍(下忍)の様な気分で歩き始めた。
ーーーーーーが。
ん?誰だよ?
しばらく歩いていると、ポンポン。と、肩を叩かれてしまい、後ろを振り向くと、冬美が立っている事に気付いてしまった。
あれれ〜おかしいぞー。さっきまであそこにいたはずなんですけど…。
忍びの様な気分から、小さくなった名探偵の様な気分に変わった俺に対し、肩を叩いてきた冬美が、にっこりと微笑みながらこう告げてきた。
「
「……ちょっとだけっすか?」
何時、何分、地球が何回までと、聞いておくべきだろうか?
「私が来るまでだな」
「……はい」
それは、ちょっととは言いませんよね?などとは、口が裂けても言えない事であった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
自分の教室へと、テクテクと廊下を歩く。
これから説教かと思うと、その足取りは重い。
教室に戻ると、真面目なクラスメイト達は下校の準備を始めていた。
「ねぇねぇ?この後オケ行かない?」
「お!いいね〜!カラっちゃう?」
ギャハハ、アハハと、良く分からない言葉を発するクラスメイトの横を通り抜け、窓際の一番後ろから二番目の席へと向かって歩いて行く。
ガタッと椅子を引き、ドカッと椅子に座ったところで、はぁー。と、深くため息を吐いてしまった。
しかし、こればかりは仕方がない。
はぁ…説教かぁ…。
めんどくせぇなぁ。
帰りたいなぁ。
ぐでーんと、机の上に顔をうずくめながら、そんな事を俺は思っていた。
「桐原君」
そんな俺だったのだが、後ろの席に座る女生徒から、声をかけられる事となった。
「今日の部活なんだけど…」
「…休みなんだろ?」
「…………」
今の会話を聞いて、え?違うの?と、普通の人ならそうなるのだろうが、俺は違う。
いや、俺が、普通の人じゃないからではないからな。
彼女とは半年以上の付き合いなので、彼女が無言=イエスだということが分かっているからである。
勿論、違ったらその場で訂正してくれる。
一応、説明しておくと、声を掛けてきた彼女の名は、
クラスメイトであり、同じ部活をしている彼女。
このクラスで唯一俺が、喋れるクラスメイトでもある。
いや、正確には、喋りかけてくるクラスメイトだと、言い直そうか。
ま、主に連絡事項しか喋りかけてこないので、喋れる関係と言っていいのかは疑問なのだがな。
「それじゃ」
「ああ。またな」
この会話も、一種の社交辞令みたいなものなのだろう。
ホント…どこからどうなったら、友達と呼べるんだろうな。
帰り仕度をしているであろう彼女を背中で感じながら、そんな事を俺は考えていた。
ーーーーーーーーーー
遅い。
ちょっとだけよ〜って、言ってなかっただろうか?うむ。言ってなかったか。
ライトノベルを半分まで読んだところで、チラリと教室の壁時計に目を向ける。
おい、おい。一時間も経ってるじゃねぇか!
浅倉冬美から言われたのは、来るまで待っとけである。
約束を破りやがって!とは言えないが、ちょっとって何ですか!と、言ってもいいレベルではないだろうか?
く、くそ。文句でも言ってやろうか。
しかし、美人だからって、何でも許してもらえると思ったら大間違いだからな!などと言ったら言ったで、え?美人だって?と、返されてしまうのがオチだろう。
浅倉冬美とは、そういう人なのである。
さて、どうするか。探しに行くべきか?帰る!という選択肢もあるといえばあるが…。
そんな事を考えていた時である。
ガラ、ガラ。と、教室の扉が開く音が聞こえてきたのであった。
現れたのは言うまでもなく、浅倉先生である。
「いやぁ、すまんすまん。すっかり遅くなってしまったな」
「…そうすね」
「ん?おい、おい桐原。女性が、ごめん待ったぁ?って言ってきたのだから、いや、俺も今来たとこーっと、返せないものかね」
「一時間と三分待ったとこっすわ」
「さてと、あまり時間をかけてもアレだな」
俺の嫌味を華麗にスルーし、浅倉冬美先生は、俺の前の席へと腰かけた。
前の席にスッと座り、窓際の壁に背中を預け、黒くて長い髪を右耳にかけながら、浅倉冬美は持ってきた資料か何かを見始めた。
資料の確認が済んだのか、右肘を俺の机の上に乗せ、顔だけコチラに向けた冬美が口を開く。
「どうかね、桐原?このクラスならやっていけそうかね?」
「ははは。去年のクラスでもやっていけてましたよ」
留年する事もなければ、成績を落とす事もない。むしろ、成績は上がった方である。
「アレはやっていけたとは言わないがな」
「そうすっね。体育だけはダメでしたね」
体育の成績だけは上がらなかった。
いや、ペアを組む人がいなかったからとかではない。
運動部に所属しているクラスメイトが、一年の秋頃からメキメキと力をつけたからである。
全く。体育の成績を運動部と比較するなんて、酷すぎると思いませんか?
「誤魔化すな。下校時間まであと少しなんだから、真面目に聞け」
それについては、俺は悪くないはずである。
「…それを言うなら佐倉はどうなんっすか」
「…人は人だろ?と、まぁ、大抵の人はそう言うのだろうな。桐原。彼女はどうかね?」
質問に対して、まさかの質問で返されてしまった。
「どうって言われましても…」
「なぁに、ここだけの話しさ。君と彼女は同じ部活仲間だ。何かないかね?」
「はぁ…では。スポーツが苦手ではありますが、頭はご存知の通りです。無口なところがたまに傷ではありますけど、一部の男子の間ではそこがいいと言われている、そんな女性です」
「なるほど、なるほど。なら、スポーツが得意なら完璧だと言うことかね?」
「いやいや。話し聞いてたっすか?無口なところがたまに傷ですよ」
「でも、そこがいいのだろ?」
「一部の男子生徒の間では、ですよ」
「ふむ…桐原。どうやら君は、何か勘違いをしているようだな」
「勘違い…っすか?」
「そうだ。何も、全員から好かれろとは言っていないさ。一部でいい。ほんの数人足らずでいいんだ。君の事を想ってくれる人が一人でもいいのだよ」
「はぁ…」
それはルックスの問題ではないのだろうか?
てか、なんだ?
誰かのフラグ(好感度)を折ってこい!と、そう言っているのだろうか?
「彼女は確かに無口で言葉足らずの部分が多いと、私も心配しているところさ。逆に君は、言葉が過ぎる部分が多いところが、私としては心配しているところなのだよ」
「…そうっすかね?」
クラスでぼっちで、誰とも喋ってないんですけどね。
「桐原。人と人とは助け合って生きていかなくてはならない。バイトをしている君なら、それが痛いほど分かるはずなのだがな」
「いやいや、先生。社会なんてそんな綺麗な世界ではありませんよ。仕事が残っていたとしても、雑用や下っ端の仕事を平気で人に押し付け、自分は定時でキチンと帰るような、そんな汚い人ばかりですよ」
コレでコチラの時給の方が安いのだから、やってられないったらねぇぜ。
はん。と、鼻で笑うと、ダン!と、冬美は机を思いっきり叩くのであった。
ひ、ひぃ⁉︎マ、マズイ…怒らせてしまっただろうか?
プラスで説教が加算され、下手をすれば帰るのが遅くなってしまうかもしれない。
ここは、嘘でも謝っておくべきだろうか?
しかし、俺の心配は杞憂に終わる。
「分かる。分かるぞ桐原」
「………え?」
俺の意見に対し、うるうるした瞳をコチラに向けながら、浅倉冬美は同調してくるのであった。
た…助かった。
帰る時間が遅くなるということは免れそうだ。と、内心ホッとしていた。
「桐原…聞いてくれるか?」
ーーーーのだが、このあと浅倉冬美の悩みを聞く羽目になり、別の意味で帰るのが遅くなるのであった。
ーーーーーーーーーーーー
放課後のチャイムの音が鳴り響く中、下校の為にと靴箱へと向かっていた。
やれやれ…結局この時間かよ。
部活をして帰る時間と、何ら変わらない。
そんな時間。
はぁ。ついてない…ん、ん?
ため息を吐きながら靴箱を開けると、一通の封筒が、パサリと足元に落ちてきたのであった。
な!え?は、はぁ!?
慌てながら、周りを見渡してしまったのは、何故なのだろうか。
ドッキリを疑ってしまったからなのだろうか?それとも、誰かに自慢したかったからなのだろうか?
どうやら誰も見ていないようだ。
何とも言えない気持ちのまま封筒を開けて中身を確認すると、中には一枚の紙が入っていた。
どれどれ…。
封筒を上着のポケットに仕舞い、急いで内容を確認すると、紙には女の子らしい丸っぽい字でたった一言だけこう書かれていた。
屋上で待ってます。と。
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