僕の右手は左手だった

天沢 凌

セレニテ

 僕はこんな美しい絵ではなくて、醜い絵が書きたかったんだ。それこそシーレのような絵を。

 でもしょうがなかった、しょうがなかったんだよ。美術の先生なんて「芸術は美しくあるべきです」と言うんだ。本当は反論してやりたかったけど、そんなことをしてみろ。問題児扱いされて僕の学校生活はお先真っ暗だ。弱い人間なんだよ僕は。

 結局、コンクールの最優秀賞をとったのは「少年が休み時間に少女に対してスカートめくりをしようとしている場面」を色彩豊かに描いた絵だった。確かに眼を奪われるような色使いだったさ。でもそれだけ。見てくれの美しさで選ばれたんだ。絵の背景なんて観ていなかった。いや、読んでいなかったんだ、絵を。

 「なあ、そうなんだろう?」

 

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僕の右手は左手だった 天沢 凌 @monet_jam

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