800字の本棚
祭谷 一斗
第0話 説明、という程ではなく
暇になったなと、程なく気づいた。つい先日、入り浸ってた場から距離を置いた時のことだ。寂しいでも悲しいでもない、単に時間が空いていた。
風呂から出て寝床に行く。妙に頭が冴える。時計を見る。22時。いつもは25時かそこらなのに。ざっと3時間、突然空いたんだ。
しかし暇とは妙だ。一日とはこんなに長かっただろうか。場に入り浸る前の数十年、一日が長いと感じたときなんて、心底つまらない体育祭練習のときくらいだったはずだ。これには何か、カラクリがあるに違いない。
空いた時間。以前の僕は何をやってたかと言うと、思い出した、せっせと本を読んでたんだな。スマホはおろか、ケータイを持ったのさえつい最近。その時間がいつの間にか、そっくりそのまま入れ替わってたんだ。
結局のところ、本。日がな一日、かつての僕は本を読んでいたんだろう。真新しいカレンダーに一日一日、読んだ本の名を殴り書いていた。須賀しのぶの『流血女神伝』、樹川さとみの『楽園の魔女たち』。カリエが旅を終え四人の魔女娘が落ち着くまで、かかったのは数日だった気がする。いや、あれはまだ『流血女神伝』の完結前だったかな。
不意に空いた3時間。いや朝昼もある、ざっと4時間は見ていい。そこまで考えて、僕は震え上がる。いつの間にか、こんなにも一日を縮めていたのか。ともあれこの暇は、十数年かそこら前の状態と言っていい。状態の方が勝手に若返った、こいつはいい。
だが、とも僕は思う。十数年前と同じではつまらん。年をとると欲が出る。じゃあ、と考える。十数年前と同じでないことは何だろう。それは書くことだと、ひとまずそうなった。その結果が、もったいぶったこの文章という訳だ。
本や文章について書いていこうじゃないか。1回で800字、こいつを100回繰り返す。100回で8万字。いや100回か。800字はともかく、100回はどうだろうな。新しい思いつき、果たしてどうなることだか。
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