第70話 メグは天使だ女神だビーナスだ!

 ごきげんいかがですか?


 ええ、ジジイが完全にトチて狂っていますよ。どうぞお笑いください。でもメグちゃんはわたしのクソ長い人生で最も美しい女性なのですから、ああ一目逢いたいなあ。いや、本当は、ずっと一緒にいたいです。もし手に入ったら絶対に離さないんだから!


 これまでは中学で一緒だった中沢弘子さんが最も美しい女性でした。わたしと同じ左利きで、しかもわたしと同じクラスの横尾くんが「あいつ、お前に似てない?」って言いました。そうなんです。いままで言って来ませんでしたが、わたしって、イケメンなのです。ジジイになったいまだって、あの讀賣新聞の半グレ野郎に年下に思われるほど、ナチュラル・アンチエイジングメンなのです。全くものの役に立っていませんがね。わたしの持論ですが『人間、性格が一番大事』わたしの性格が最悪かつ凶暴だともうおわかりですよね? もし、煽り運転のオヤジが喧嘩を売ってきたら、定石通り、ノド輪ぜめから、つっぱり、張り手を連発し、最後は廻しをとって呼び戻しの荒技で道路にぶちのめし、ストマックに蹴りを入れましたものを。あの被害者さんったらテレビにでまくっていますが、全く抵抗出来ないし、窓も閉められないなんて……あんまり、テレビでない方が良くないですかね?


 ここで、未確認情報です。メグちゃんは左利きのようです。わたしと一緒だ! 中沢さんとも一緒ですけど、特に関係はないです。


 わたし、外国人の女性には全く興味ないのですが、ハーフになると途端に大好物となります。いままで、ハーフNo. 1は池田エライザだったのですが、メグちゃんが、突き抜けろー、ピリオドの向こうへってな具合で、天空の世界に君臨しちゃったのです。例えるなら、天衣無縫を身にまとった美しい天女でしょうか?


 ああ、逢いたいなあ。奇跡よ起きよ。不動明王はこっち方面は疎そうですから、大日如来か釈迦如来かなあ?

 ウチに普賢菩薩もいらっしゃるのですけど、女形なのです。肩に像が載っていますけど…… 恋愛祈願はしてくださるのかしら。あとで調べてみましょう。


 予期せぬハプニングは脳神経外科に行く横浜線のなかで起こりました。ふと車両の端っこにある広告をぼんやりと見ましたら、我が正妻、新垣さんが『ソフランアロマリッチ』の宣伝に出ていらっしゃいます。

「わあ、美しい……」

 写真から目が離せません。三十路をすぎたとはいえ、その美貌は変わりません。いや磨き上げられてより洗練されたといえましょう。

 メグちゃんと新垣さん、どちらがわたしの一番星なのでしょう? 答えを出すには、ちょっと冷却期間が必要です。


 さて、脳神経外科ですが、問診の結果MRIを受けました。そレで出た答えは? ……ははは、一点の曇りもない綺麗な脳みそだそうです。もうカミングアウトしましょう。とてもじゃないが、五十路の脳ではないそうです。血管のつまりや細くなっている部分も全くないそうです。じゃあ、なんで身体が脱力したり、半月以上記憶があやふやだったのでしょう……決まってますよ。気候が良くて、躁状態になっていたわたしにドスンドスンと『四大トラブル』を起こされて、脳内伝達物質がドバドバッとね。素人のわたしにもわかるのに、なぜ専門家の古賀先生がわからないのでしょう。不思議でなりません。さりげなく『精神科は今日も、やりたい放題』でもぽとんと落としてみましょうか?


 まあいいや。ちょっと新垣さんに心が動きますが、ここは腹を決めて、宇賀神メグちゃん一筋にいきましょう。出演番組はみんな録画するぞ。スポットニュースだってチェックチェック。やがてこの努力が結実し、メグちゃんと邂逅……よほどの奇跡でも起きねばムリなのね。しょぼん。

 では。



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