ご当地グルメとくしまバーガーちゃん、明石原人バーガーくんをおちょくる

明石竜 

第1話

「明石原人バーガーとか、クルミやイチジクなんかまでのっとるけん、

食べにくくてめっちゃ不味そうじゃな。売上はうちの圧勝じゃろ♪」

 とある町のお祭りで催されていた、ご当地グルメのナンバーワンを決める

グランプリにて、出来立てのとくしまバーガーちゃんは向かいの屋台で売られていた、

同じく出来立てのそいつを嘲るように眺めていました。

「なんどいコラッ! てめぇの方がレンコンとかさつまいもとか

邪道なもん入ってて、食いにくくて不味そうやないか。このダボッ!」

 目が合った明石原人バーガーくんは不愉快そうに言い返します。

「さすが播州弁、言葉遣いが下品じょ。バーガーの形からして。うちは

阿波牛に鳴門金時っていう日本全国に通じるお上品な具材が満載なんじょ。

それにひきかえあんたの具材は狭い地元だけで通じるお山の大将な全国的には

無名なブランドじゃろ」

 とくしまバーガーちゃんは得意げに笑います。

「てめぇ。俺の言葉遣いはともかく、明石原人バーガーをバカにしたのは許せへん! 

さっきの発言、謝罪せぇ!」

 明石原人バーガーくんは怒り心頭。具材のイチジクが零れ落ちそうになります。

「すまん」

 とくしまバーガーちゃんはペロっとトマトを出して謝ります。

「何わろてんねん。すまんですむかアホ! すまんですまん! そんなもん。てめぇの屋台、立ち退きさせたる。火ぃ付けて燃やしてまうぞ! 次のご当地グルメ総選挙予選で落としたる!」

「フフフッ。出来るもんならやってみぃ」

 とくしまバーガーちゃんと明石原人バーガーくん、睨み合って今にも大喧嘩、ぶつけ合いになりそうです。

 次の瞬間、

「……」

「……」

 2つとも齧られ具材の一部が欠けて、何の変哲もないごくごく普通の

ご当地バーガーへと変わりました。

 この意思と言葉と喜怒哀楽の表情を持った2つのご当地バーガー

(ただし人には全く認識されない)は、誕生から3分足らずで

お買い求めたお客さんのお口の中に入り、共に胃世界で消化されたのでした。

 ちなみにとくしまバーガーちゃんはワイルドな感じのおっさんに、

明石原人バーガーくんはタピオカブームにも乗ってそうな明るい感じの女子高生に

食されました。

 どちらが幸せだったのでしょうか?


 ちなみにこのグランプリ、ご当地バーガーで一番売れたのは、

圧倒的に佐世保バーガーでした。

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ご当地グルメとくしまバーガーちゃん、明石原人バーガーくんをおちょくる 明石竜  @Akashiryu

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