七 戌亥神社
お母さんは脇道を通り、本堂の裏へと回った。
昨日は気づかなかったけど、裏には鳥居があって、石段が上へと伸びている。
あまり人が来るとは思えないけど、草が覆い茂ることもなく、それなりに手入れがされている。きっと明人さんとお祖父さんがやっているのだろう。
わたしはお母さんを追って石段を登った。
数分登り続けると神殿が見えた。
戌亥寺は昔から高野山系の修験道のお寺だった。
明治元年三月に政府によって出された神仏分離令により
その影響で一度は神社になったものの、運動が下火になると現在の位置にお寺を再建築し、そちらがメインになっている。と、叔父さんが言っていた。
本殿の前には一対の狐……ううん、しっぽの形が違うから犬か狼だろうか。
とにかく石像があり、大分剥げているけど、それぞれ白と黒に塗ってある。
狛犬にしろ、狐にしろこんな異様な物を見た事がない。
でも、わたしの頭には政宗くんとボンちゃんの姿が浮かんだ。
大分古びているけど、本殿は思っていたよりも大きい。
お母さんは扉を開けると、サンダルを脱いで中に入った。
わたしも続くと、中はちゃんと掃除されていて清潔だった。
「座って」
わたしはお母さんと向かい合って座った。
「朱理、あんたは制御出来ない力がいかに危険かを理解している。
でも、制御出来るから、自在に使えるからこそ、大切な人を傷つける事があるのを知らない」
「どういう事? 使い方をミスるって意味? ピストルの誤射みたいに」
「いいえ、もっと悪いわ。それを今から身をもって体験させる」
「どういう……」
「百聞は一見にしかずよ」
そう言うと、指先でわたしの額に触れた。
次の瞬間、眼の前が真っ暗になった。
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