虹の切符

勝利だギューちゃん

第1話 想い出の女

子供の頃は、未来は希望に満ちていた。

がんばれば叶うと信じていたし、そう教えられた。


しかし、大人になるにつれて、それは失われえいく。

厳しい現実の前には、太刀打ちできない。

そして、敗れ去っていく・・・


でも、せめて子供の時くらいは、夢を見ていたい。


「ねえ、これあげる」

「これはなに?

「虹の切符」

「虹の切符?どうするの?」

「それはね・・・」


幼稚園の頃、遠足でみんなとはぐれて、途方に暮れていた。

泣き叫ぶ僕に、優しく手を差し伸べてくれたお姉さんがいた。


僕の手を握り、いろいろとお話してくれた。

いつしか僕は泣きやみ、お姉さんの話に夢中になった。


どんな話かは、おぼろげにしか覚えていない。

ただ別れ際にもらったのが、虹の切符だった。


「これはね、いつか君が大きくなった時に使ってね」

「どうするの?」

「それはね、その時の君に必要な場所に連れて行ってくれるよ」

「どこから行けばいいの?」

お姉さんは、笑って答えてくれた。


「君のおうちの近くの駅からでもいけるよ」

「でも、おひっこしするかも・・・」

「大丈夫だよ」


そういうと、お姉さんは僕を優しくハグしてくれた。

お姉さんの顔は覚えていない。


でも、とても温かだった・・・


それから、10数年の時が経ち、僕も高校生になった。

あの時の虹の切符は、今でも大事にしまってある。


おそらくは、使う事はないと思っていた・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る